俺は震える彼女の手を取り、優しく心を込めて声をかけた。
貴方「貴女の勇気ある行動に感謝する。おかげで助かった、ありがとう」
武人のそれといった感じでキリリと引き締まった表情の赤毛の少女は、そうやって優しい言葉を投げかけられたと同時に顔の筋肉から一気に力が抜けたようだ。
美鈴「あー、怖かったー。でも無事に逃げきれてよかったですね♪」
だがそれは恐怖に打ちひしがれるものではない。あくまで自分は何ともないと言わんばかりに笑顔を見せてくれたのだ。ただ軽そうに「怖かったー」と口にするだけで。
なるほど、彼女は門番。何かを守ることに関しては特に秀でているのだろう。さすがに相手が悪くて恐怖を感じてはいたようだが。
美鈴「でもまだ心臓がバクバク言っているんでしばらくこうさせてくださいね? こうやって抱っこしてると落ち着くんです」
平静を保てるというのなら仕方あるまい。彼女には恩があるんだから。
貴方「無理しないで。相手が悪すぎたんだ、本当は怖かったんだよね? でも恐怖に打ち勝って決意してくれてよかったよ。あと少し判断が遅れていたら……」
今もまるで抱っこされている大きなぬいぐるみみたいに、その両腕に抱かれている俺。彼女の為とはいえちょっと気恥ずかしい。やっぱり頭に当たってるが多分本人は気付いていない。
美鈴「○○さんが必死になっているのを見ていたら、私も何かしないとって思ったんですよ。それに昔のことを思い出しちゃって」
昔の話? 俺がそのことを詳しく聞こうとする前に彼女は頭を撫でながら続けてくれた。
美鈴「今でこそ容赦ない感じでナイフを投げつけてくる咲夜さんですけど、小さい頃は本当に可愛らしかったのですよ。まるで私に妹が出来たみたいでした。いつだったか、『私も門番やるー』って言って私と一緒に立っていた時も、まるで私を庇うかのように立ち塞がるなんてこともありました」
今の門番とメイド長の関係を見ているととても想像できないが、これだけ懐かしそうに語っているのだし、確かに過去はそうだったのだろう。
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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