行く先々で何故か俺の取り合いみたいな小競り合いが発生する。いったいなぜ……?

遅れを取り戻そうと巡回していると日傘の似合いそうな赤いチェックのワンピースに身を包む少女が行く手を阻むように俺の前に現れた。ニコニコと愛想のよさそうな笑みを浮かべているように見えるが、なんとなく俺はその薄目の向こう側の本位を感じ取り、思わず身構えた。

幽香「仲間内で飲んでいたのだけれど、話題が滞ってしまってね。光栄に思いなさい、貴方を起爆剤として仲間に入れるわ」

この申し出は拒否すると痛い目に遭うパターンだ。まさか鬼以外でもこんな芸当を身に着けている奴がいるなんて!

とにかく大人しく従おう。背をわずかに丸めて身構えつつ彼女の卓に向かう。彼女の他にその卓にいたのは雛であった。他にはメディスンもいたが、「花より団子」ならぬ「酒より花」といった感じで花と戯れていた。少し離れた場所で雛が微笑みながら、彼女の様子を見てゆっくりとグラスを傾けている。人形繋がり……?

新たな獲物をゲットしたといわんばかりににんまり笑う幽香に、我関せずといった感じでぷいっとそっぽを向いてしまった雛。

折角同じ卓なのだからと雛も誘おうとした俺を阻むように、俺の前にグラスが乱暴に置かれる。幽香が「まあ飲め」とジェスチャーを行っている。雛はなんか時折チラチラこちらの様子をうかがっている気もして俺としても気になるのだが、とても誘えるような状況ではない。しばらくは諦めよう。

さて、それで目の前の飲み物だ。お酒というよりかはジュースのような色だが、さっきは強面の姉さん(勇儀のこと)に渡された飲物で痛い目に遭った。今度もまた何か仕掛けてあるんじゃないかと恐る恐る口にするが……意外なほどに甘くておいしい飲物であった。

幽香「どうよ? ただのアルコールじゃ芸がないから花とかフルーツを使ってアレンジをしてみたわ」

どうやらあちこちでかき集めたお酒を組み合わせて別の酒(というかカクテルっていうのだろうか?)を作り出してしまったらしい。フルーツを使った爽やかなものやハーブでも入っているのだろうか、スーッとのど越しの爽やかなものまでいろいろ用意してくれた。

貴方「スッキリしていて美味しいね。ようやく落ち着けそうだよ」
幽香「まあ嬉しいわ♪」

はじめこそ強引に引き寄せられたものの、お酒の味も良く喉が焼けないし、そして美女がお酌をしてくれている。始まってからロクな目にあっていない俺にとってはまさにオアシスであった。

幽香「ちょっと、一人で飛ばし過ぎよ? 私も一緒に楽しませて頂戴な」

俺はその申し出を素直に受け入れた。二人で甘い甘いジュースのようなお酒を口にする。

ちょっと強引なところがあったり、怒らせると危険なほどにサディスティックだけど、基本的に幽香さんは親切な女性なのだ。安心してきたら体の力が抜けていく。病み上がりだしずっと気も張っていたのでその反動が来たのだろうか。はたまた単に酔いが回ってきたか。多分両方だな。

貴方「ちょっと疲れてきたか……も……」

ふらつく俺を見て、普段の彼女からは想像できないような柔らかな笑みを浮かべる向日葵妖怪。

幽香「そうよね。病み上がりなのにこんなに汗をかきかき頑張っちゃって……。少しくらいここで寝てても罰は当たらないわ。さあ、私のお膝にいらっしゃいな……」

判断力も鈍っていたのだろう。俺は何の疑いもなく暖かで柔らかい赤いチェック模様の枕に顔を埋め……ようとしたが、別の甲高い声で俺の意識は一気に覚醒にまで引きずり出された。

雛「貴方から悪い『気』が出ているわ!」



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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