貴方「ほら、水を用意したよ」

とにかく水分を摂らせて頭を冷やして貰おう。差し出したコップを受け取った早苗さんは無言でゴクゴクと喉を鳴らす。紅潮しきっていた頬が若干の落ち着きを見せた。だが、彼女の両眼は未だにトローンとしていた。

早苗「この幻想郷では……常識にとらわれ……」
貴方「『常識にとらわれてはいけない』という常識にとらわれているぞ?」
早苗「はれ……? 常識が常識でだから幻想の……」

「もういい、今はおしゃべりする気分じゃない」と諭すと、もう一杯の水を勧めた。これも大人しく両手でコップを持ちつつゴクゴク。一気に飲み切ると「ぷはー」と気持ちよさそうな声を漏らした。

早苗「うーん、やっぱりお酒でおかしくなっていたみたいです……。まだポワーンとしますぅ」

立ち上がり元の会場に戻ろうとする彼女の腕を俺は引いて引き留めた。「なら休め」と口にして。

ふらふらと再び座り込んだ風祝はまるで俺に寄り掛かるように倒れこみ、コテンと膝の上で横になってしまった。横たわりながらこちらの顔を見上げてくる。

早苗「○○さんが潰れていた私を助けてくれたんですね♪」

貴方「早苗さんが飲めないの知ってたからね。まさか自分から暴走するとは思わなかったが」

ばつが悪いのか、テヘヘと小さく舌を出して笑ってごまかそうとする緑髪の少女。空いていた俺の片手を両手で優しく包むように掴んできた。

早苗「やっぱりお酒には飲まれちゃいますね。あのままだったら大変なことになっていたかもしれません。そんな私を助けてくれた○○さんはまさに王子様です///」

貴方「呑んだくれの酒臭いお姫様なんて嫌だぞ?」

とんでもないこと言いだす早苗さんの額を軽く小突いた。今のやり取りがおかしかったのか、一度「ぷっ!」と笑いのダムが決壊すると、早苗さんはくすくすと笑いだした。急なことではあったが、その笑いに声に俺もつられてしまった。

男女のなんてことない笑い声が「聖域」に響き渡った。何ともばかばかしくて素敵な会話のキャッチボール。

一通り笑い終わると疲れたのか、飲兵衛姫はすぅすぅと俺の膝の上で寝息を立ててしまった。

貴方「やれやれ……」

見回りの役目があるのだが、白蓮さんもいないこの最後の砦をもぬけの殻にするわけにもいかないし、さっきから腕にスリスリと頬ずりしてくるんだから離れるに離れられない。

気持ちよさそうに俺の膝の上で寝息を立てる早苗さんの髪を優しく撫でながらも、宴会がちゃんと進んでいるかを案ずる俺であった。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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