今日青娥に抱き付かれたのは二回目だが明らかに様子が違うのが震える彼女の腕からもわかった。

貴方「わ、悪かった悪かった!」

駄目だ、話を聞いてくれない。まずは落ち着かせるのが先決だろう。ぎこちない手で俺は青娥の後頭部を控えめに撫でる。

貴方「落ち着いてくれたか?」

答える声はなく、ただ俺の腕から涙で潤んだ目だけをのぞかせてコクリと小さく頷くのみであった。あんなにも胡散臭くて憎たらしい筈の彼女がより一層愛おしく見えてきた。ギャップってやつだろう。

もしもの話だが、幻想入りした俺が最初に白蓮さんではなく青娥に出会っていたらまた随分と違う展開になっていたのかもしれないな。

しかしあの邪仙がこんなにも弱弱しい姿を見せるとは俺も予想外であった。途中まではいつもの甘ったるい声で誘惑してくるまさに悪女といった感じだったのに、まるで人が変わったかのように純真な態度を見せたのだ。

あれ、前にも似たようなことがあったような……。俺は今日のそれらしき出来事を思い起こしていく。

スキンシップをしていたら子猫のようになったお空、閻魔様から一緒に逃げていたら「弟が出来るのもいいですね♪」とか言い出した美鈴、泥酔していたところを助けるためにおんぶしたら「王子様」と口にする早苗さん、一緒にお酌して膝枕とかしてくれるといった幽香さん。そして体から悪い気が出てるとか言って耳を舐めたり体中をまさぐったりした雛と衣玖さん、更にこの二人から出た「俺の汗」というキーワード……。

汗……そうか、汗だよ! 思えば俺と密着した少女は皆俺に対して異常なまでに好意的になっていた。何らかの原因で俺の汗が少女たちを魅了する媚薬のようになってしまったんだ! なんということだ、雛と衣玖さんの推理は半分正解していたというわけだ。それを俺は蔑ろにして……。

こうしてはいられない。異変がこれ以上酷くならないように俺から出ている「悪い気」とやらを何とかしてもらわないといけない。もう一度雛に会って本当の意味での「異変」を俺から追い出してもらわなくては!

そうか、じゃあこうやって青娥が好意的なのは演技ではないとはいえ本位でもないってことなんだよな……。全ては俺の体に起きた異変のなせる業。それを思うと俺は少し寂しくなった。だが、異変は解決しなければならない。俺はこれ以上青娥を傷つけないように優しく離れると、ゆっくりと踵を返した。

……修羅場が待っていた。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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