彼女は鬼のような形相をしてプルプルと震えていた。足元では俺が介抱した早苗さんの隣でやっぱり酩酊していたと思われるアリスが横たわっていた。おそらくはこの怒りのオーラを発している彼女が介抱していたのだろう。仏の顔の筈の我が恩人は今までに見たことない程に怒りで表情をゆがめていたのだ。
そうか、そうだったのか。「聖域」に関する事件の全容がようやく見えてきた。つまりこういうことだ。
俺を骨抜きにして自らの陣営に迎え入れたかった青娥は、人の寄り付かない「聖域」で二人きりになることでその目的を達成しようとした。しかし「聖域」では常に白蓮が眼を光らせていたのだ。
白蓮を「聖域」から追い出したかったものの、直接手を下すのはリスクが高いと踏んだ青娥は、自身の宣言通りに白蓮ではなくて彼女と同じく魔法使いであるアリスに毒、つまりウォッカレベルのキツい酒を盛ることで酩酊させると彼女を「聖域」へと誘い込んだ。
白蓮の介抱を受けているアリスはある時、彼女に「トイレに行きたい」旨を伝えたのだろう。当然一人で向かわせるわけにはいかないので、白蓮は付き添う為に「聖域」を離れることになる。
恐らく俺が早苗さんを背負って歩いている様子を空から見て青娥は行動に出たのだろう。もぬけの殻になった「聖域」に入っていったのは俺とぐったりする早苗さん。そう、当初の計画通りに人目のない場所で二人きりになり、俺を手籠めにしようとしたのだ。
しかし異変が起きた。俺の汗が何故か強烈なフェロモンになっており、汗を至近距離で思い切り吸い込んでしまった青娥は俺に惚れ込んでしまう。こうなると鹵獲どころではなくなる。
逆に骨抜きにされた青娥にタジタジになっているうちにトイレから戻ってきた魔法使い二人と鉢合わせして……そして現在に至る。
つまり本来俺は被害者というわけで決してやましい気持ちが主体となっていたわけでは……。
貴方「いや待て、誤解……」
白蓮「誤解なはずありますかっ! 南無三っ!!」
「ヒッ!」と俺は悲鳴を上げながら頭を抱えてうずくまる。振り下ろされるゲンコツ……。
しかしそれは御幣によって遮られた。
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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