目の前に広がるのは一面の薄水色と桜色。スキマの外では幽々子が待ち構えていたかのように両手を広げていた。俺は重力の赴くままに彼女にぶつかるとぽふっと優しく抱き留められたのだ。ほんのり漂う桜の香りが鼻孔をくすぐる。
そして顔にすさまじいばかりの「凶器」が押し寄せてきているが、今回ばかりは状況が状況なだけにクッションとして機能したと思えばやぶさかではない。恐らく後ろにはスキマを発生させた大妖怪が控えているのだろう。
幽々子「ゆかりー、○○君が来たわよー」
ほどなくして亡霊少女の隣に座らされた俺は反対側に幽々子と同じようなドアノブカバーのような形をした帽子を被った少女が近づいてきた。奴こそスキマ妖怪、つまり俺をこの場所に誘った張本人……。
紫「来たわね、最高の酒の肴が。なんだか今日の○○は妙に人気者だから嫉妬しちゃったわ」
二人とも寄りすぎだって。そんなに密着されたら暑いし、暑いということはまた汗が……。このままではまた異変の犠牲者が……。
貴方「あの……」
幽々子「駄目よー? 美女二人のお誘いを断るというのかしら?」
自分で美女とか言うなよ……。そう心の中にツッコミの言葉をとどめていると勝手にグラスに飲物を注がれる。で、これを飲むようにと促された。どうにかこの状況を脱却したいが、抵抗するのはあまりにヤバ過ぎる相手だ。しかも二人。
幸いにもあまりアルコールのきつい飲物ではなかったが、俺は今すぐに自らの体に起きた異変を何とかしないといけない。お互いにグラスの中身を飲み終えて一瞬の間が出来た。意を決して……
貴方「俺には行かないといけない場所が……」
そそくさと立ち上がろうとしたが、しだれかかるように幽々子に押し倒されてしまった。横たわる俺の左右に少女二人。このパターンはまさか……!
幽々子「そうよね。行かせてあげるわ、私達が。○○君を天にも昇るような気分になるようにイかせてア・ゲ・ル♪」
亡霊が天にも昇るとか言い出すのはシャレにならないぞ。それに死んでしまうわけにはいかない。俺が行こうとしているのは桃源郷ではなくて、薬の副作用を中和する手段を知っているであろう月の頭脳……
紫「分かっているわ。今の○○は異変の中心……むしろ異変そのものと言っても過言ではないわね」
甘ったるい幽々子に対して恐ろしいまでに冷静な言動を続ける紫に俺は驚いて目を見開いてしまった。なんだよ、異変に巻き込まれるふりをしてちゃんと事情が分かっているんじゃないか。
貴方「ならば俺を解放してくれ。俺は永遠亭で処方された薬の副作用で苦しんでいる。再び診察を受けてしかるべき治療を受けなければならない!」
紫「その申し出を受けるわけにはいかないわ。むしろその申し出は無意味とでも言いましょうか。というのも、永遠亭の技術では貴方の病気を治療できないのだから……」
えっ、それってどういうことだ……!?
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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