半ば肉体がキョンシー化していた紫は私に危害を加えまいとスキマに逃げ込んだ。その直後にスキマはその境界を維持できなくなり瞬く間に消えてしまった。

その様子を見ていたのは今もスキマ妖怪の名を叫ぶ私のほかにもう一人。そう、先程まで戦っていた青娥もいるのだ。

青娥「くくく……あははははは! スキマ妖怪は今まさに死んだ。いいえ、生きてはいるけれど、本当に死んだ方がまだ幸せだったかもしれないわね」

狂ったように高笑いをする邪仙を涙で潤んだ目でキッと睨み付ける。ヨロヨロと立ち上がりながら。

霊夢「どういうことっ!? 紫はいずれ戻ってくるわ。その時こそ貴女の命日よ!」

そんな真っ直ぐな姿勢を最初は驚いていたものの、すぐにカラカラと笑いながらのらりくらりとかわし始める青娥。

青娥「あらあら、まだ立ち上がるだけの力が残っていたのね。さすがよ♪ それにしても、何を言い出すかと思ったらとんだ幸せものね。いいわ、何が起きたのか説明しましょう。スキマ妖怪は自らがキョンシー化しかけた状態で本人しか操れないスキマの中へと逃げ込んだ。他でもない貴女に危害を加えないように……と」

ビシと櫛で私に向けながら続ける。

青娥「あの傷だとスキマの中で完全にキョンシーになってしまっているでしょう。キョンシーとなり、能力も自我も失ったデク人形はもはや誰もコントロールできないスキマの中で永遠に漂うことになるの」

スススと音もなく私に近寄るとトドメと言わんばかりに大声を上げる。

青娥「ああ可哀想! 紫は自我を失った自分が貴女を襲わないようにとスキマに逃げ込み、そもそも貴女へ向けられた攻撃から庇ったからあんなゾンビーな姿になってしまった。すべては博麗霊夢を守る為……ですって。深い深い愛情が感じられますわねぇ。くすくす……」
霊夢「せいがぁーーーー!!」

私にしては随分と我慢した方だ。これだけ言われて黙っておくほうが無理な話である。お札、針、陰陽玉とデタラメに投げつけていくが、冷静さを欠いた状態では、何よりも傷口が完全に塞がっていない状態ではまともに戦えるはずもない。すぐに吐血して膝をついてしまった。

青娥「さっき一人で挑んで負けたことをもう忘れたのですか? わたくしを傷つけようとすればするほど傷つくのは……自分自身だというのに!」

それは確かにそうだ。だが、闘志は違う。あんなバリア、あらん限りの攻撃を当て続ければいずれ壊れてしまう。だが、そんな私の期待むなしく、全てが反射されてしまった。そしてその後に待っているのは……。

霊夢「がはぁぁぁ!!」

前よりも何倍も何十倍も多くの光の矛が私の体を貫いた。だが、こんなことで負けるわけにはいかない。倒れてもなお起き上がる。今度こそあのバリアを……。ギラギラとした眼光で青娥を睨みつけ続け、呪いの言葉を吐く。

霊夢「絶対に、絶対に許さない。アンタ、だけは……絶対にっ……!」

しかし体がついていかない。私はついに力尽きたようである。再びドウッっと血の池に突っ伏してしまった。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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