美鈴は口ごもってしまう。この子の名前を知らないのだ。
パチュリーの元で働いている小悪魔であることは分かる。だが、そんな個体は他にも沢山いる。
仕方なく、申し訳なさそうに小声で「小悪魔さん……」と呼ぶ。
小悪魔「美鈴さんが戸惑うのも仕方がありません。だって私には名前がないんですから」
名前がない者と、名前で呼ばれない者。不思議な親近感を覚える美鈴であった。
小悪魔「私、見てしまったんです。折角いい名前を持っているのに、その名前で呼ばれずに散々痛めつけられているところ。あ、動かないで」
途中、美鈴に刺さりっぱなしのナイフを引き抜く為に言葉を止める小悪魔。綺麗に取り除くと再び話を続ける。
小悪魔「私も名前で呼ばれたことなんてないです。だって、名前がないんですから。でも、折角の名前を無視されるってのはきっととても耐えがたいことなんでしょうね?」
美鈴「そうですよ、みんなして『中国』だの『ほんみりん』だの呼ぶんです。いくら咲夜さんでも、あれだけ連呼するのは許せないです!」
そんな美鈴に小悪魔が囁く。
小悪魔「ねぇ、こうなったら二人で異変を起こしませんか? 名前を蔑(ないがしろ)にされる者による、名前を勝ち取る異変を……。実はちょっとアテがあるんです」
異変という言葉が美鈴に重くのしかかる。
確かに主張は出来るだろうが、異変である以上、確実に博麗の巫女とドンパチやる羽目になるだろうし、そうしたら紅魔館の皆にも迷惑をかけてしまう。
魅力的な話ではあったが、美鈴は気軽に二つ返事をすることが出来なかった。
小悪魔「咲夜さんやレミリアさんに迷惑をかけちゃうって思ってます? でも、ここで引き下がっていてはいつまでも貴女の名前は『中国』のままですよ?」
文字通り「悪魔の囁き」である。やはり魅力的な話には間違いない。
大々的に異変を起こすことで、自分は有名になれる。起こすこと自体に意味があるのだ。
美鈴は意を決して……悪魔と契約した。
お互いのグラスにジュースを注ぎ、そして飲み干す。一応仕事中なのでお酒はNGなのである。
美鈴「やりましょう! でもその前に貴女の名前をつけないと……ですね。可愛いのつけてあげますよ?」
先程の妖しげな雰囲気など嘘のように、わくわくと美鈴を期待の眼差しで見る小悪魔。
美鈴「ごめん、やっぱりいいのが思い付かない。小悪魔だから……『こぁ』とかどう?」
小悪魔の顔が晴れやかになる。気に入ったようだ。
小悪魔改めこぁ「素敵な名前ですよ! 今から私は『こぁ』ですねー! 嬉しい///」
ぴょんと美鈴に抱きつく。なんだかんだで一晩中こぁと一緒にいた美鈴なのであった。
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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