ある日の寺子屋での話
作文「僕の先生」 津田内 相馬
第一部
僕の先生、上白沢慧音先生は強くて、優しくて、誰よりも頭が良くて、怒ると怖い。そして忘れてはいけないことがもうひとつあるが、最後まで秘密にしておくことにする。
初めて孤児院から寺子屋に連れていかれた時、僕は逃げ出した。友達がみんな「先生が怖い。」と言っていたからだ。逃げると先生はスカートにも関わらず僕を走って追いかけた。小さかった僕はすぐに捕まった。息を切らした先生は怖くて格好よかった。僕は思わず
「ごめんなさい」と一言、先生は何か言って僕を優しく抱きしめた。緊張して声は聞き取れなかったけれど、僕はすごく安心した。先生から優しさが感じられた。
このあと授業が始まった。最初の一週間はずっとひらがなとカタカナの読み書きの練習だったのを覚えている。先生は他の生徒も観ていた。しかしずっと僕の傍らで僕に読み書きを教えていた。文字を書けるようになる度に先生は頭を撫でてくれた。読めるようになる度に先生は笑ってくれた。
その夜から寮に入った。寮は家が遠い子が入るところだ。僕の孤児院も遠かった。寮での生活は楽しかった。孤児院とはまるで違った。ご飯が美味しくて、布団が柔らかくて、お風呂が綺麗。天国だと思った。でも毎朝早く先生が起こしに来るのだけは今でも慣れない。
それから約半月後、稗田先生に会った。僕は初めは生徒だと思い、稗田先生に軽い気持ちで
「ねえ、名前何て言うの?」と聞いた。稗田先生は呆れた様子で
「稗田です。貴方の先生は?」と言った。僕は妙に冷めた子だと思いながら
「けーねせんせーだよ」と答えた。稗田先生は僕に
「ついてきなさい」と言った。ついていく
と先生がいた。そこで先生は稗田先生に怒られていたみたいだった。僕は先生が怒られるのは自分が怒られるよりもずっと辛かった。しばらくして、稗田先生は
「私は教える側の人間です」と少し怒りぎみに言って去っていった。僕は先生に
「ごめんなさい」と言った。先生は
「君は悪くないよ」と言って微笑んでいた。先生は何だかしょぼくれているみたいだった。僕は堪えられなくなって先生に抱きついた。先生を励ましたかったけれど、何も言葉が出なかったからだ。先生はいつもの優しい笑顔で僕を撫でてくれた。
寺子屋にに入ってから半年と少し、一年に一度の長期の休み「盆休み」がやって来た。みんなは喜んでいた。僕は嫌だった。孤児院に戻りたくはなかった。だから僕は先生に
「盆休みもずっと先生といたい。」と伝えた。先生は一瞬きょとんとして
「そんなに私が好きか」とにやけながら言った。僕は首を横に振った。先生はショボくれた。僕の必死になって
「先生が嫌いなわけじゃなくて孤児院に戻りたくないの!」と言った。そこで先生は笑いながら
「じゃあ私ん家に来るか?もちろん働いてもらうけどな」と言った。僕は
「先生のためならいくらでも働くよ!だから盆休みの間は先生ん家に住みたい!」と叫ぶようにして言った。先生は微笑んで
「そうか、なら決まりだ。2週間バリバリ働いてもらうぞ」と言った。僕は少し後悔した。いっぱい働かされると思ったからだ。
第一部完
慧音「孤児院の環境が気になるな。働くといっただけで気持ちが揺らいでいるようだ」
名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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