青娥は幻影を掴むと、幻影はジタバタと動き、そしてまたバキッ!バキッ!、と音を鳴らした。
青「あーはっはっはっはっはっ!そんなこけおどし、もう私には効かないのよ!やっぱりそんなことしかできない単純な能力だったようね!!」
幻影はそれでも、青娥の手に「ビシッ!」、「バキッ!」と音を鳴らして殴るが、痛みはなく……代わりにある「変化」に気がついた。
青「!!」
手に、「ビシッ!」、「バキッ!」、という形の盛り上がりができていた。
蚊に刺されてできたように皮膚が盛り上がっており、まるで凸字(点字の原型)のようだった。
青「な……なによ…これ……」
そして触れた瞬間、「ビシビシバシビシバシッ!!」、「バキバキバキバキバキッ!!」、音が溢れ出す。
そして共鳴するように、殴られた顔も「バキバキバキバキバキッ!!」、と音を出した。
青「なによッ!なんなのよッ!!きゃあああああ!!」

戦争が終わった時代、発明された「スピーカー」という道具で、盛んに行われた拷問があった。
「音の拷問」である。
嫌悪感を催す、ピチャピチャ、ビチャビチャという液体音。
耳にまとわりつく、ギリギリ、ガリガリという金属音。
体の芯に響くような、ドゥンドゥン、ドンドン、という重低音。
狭い部屋に閉じ込めた人間に、このような音を四六時中聞かせ続けるのだ。
大きな音を好む傾向にある人もいるが、ディスコのようなものではなく、全くリズムも意味もない音を聞かせ続けるのは、大抵の人にとっては精神的にくるものがある。
◯◯がしているのはまさにそれだった。
「音」は殴られた自分自身から発された音。
つまり、体の内部から「ビシビシ」、「バキバキ」、という音が、すごい勢いで響き続けているのだ。
そしてその一つ一つから殴られている「感覚」だけがする。
数百の拳に殴られる「感覚」と「音」はするのに、「痛み」だけがないのだ。
やがて青娥は訳が分からなくなってうずくまってしまう。
青「(くぅぅぅ……この私が音ごときに……なんとかやめさせなければ身が持たない……!!)」
青娥はスペルカードを取り出す。
青「食らい(バキバキッ!)さい!邪符『グー(バキバキッ!)イ(バキバキッ!)イ』!!」
……スペルカードが機能しない。
もう詠唱ができないほど、青娥の「音」は強くなっていた。
鼓膜がおかしくなってくる。

青娥「もどせ、ほんとに、なにもできない」

名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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