○○は元々、人里にいた孤児だった。
父親が先に亡くなり、母親は目を患って亡くなっていた。
彼は親戚もいないうえに住まわせてくれるほど裕福な友人もいなかった。
しかし心を許せる相手はいた。年上だったが親友と呼べるような少年で、○○は彼によって毎日に希望を与えられていた。
ある日、少年は発売された染め粉で髪を金髪に染め上げ、「カッコイイから」、と○○にも進めてきた。
○○はなけなしのお金で染め粉を買い、少年の言うとおりに紙を金髪に染めた。
…そして翌日、警察に捕まった。

○○が容疑者として捕まった事件の内容はこうだった。
「髪が金髪の少年が宝石店のガラスケースを石で割り、中の商品を盗んで逃げた。」
店員は○○を見るなり「こいつだ!」と怒りを込めて叫んだ。
○○は無罪を訴えたが誰にも聞き入れられず、二年間の「無償労働」が決定した。たった六歳の頃だった。

二年後、自由になった○○は「目」を患っていた。
両目の周りが腫れあがっており、僅かながら痛みを生じていた。
同年齢の子供たちは誰も彼に近づかなかったが、感染症だと思っていた○○は気にしなかった。
それよりも、ある「噂」の方を気にしていた。
「○○の目は母親と同じで、悪いことをして天罰が下ったんだ。」
「あの子といるとこちらまで不幸になる。彼に関わるな。」
○○は耳を疑った。
母の病と死因を知っているのは自分と、そして親友だけだったからだ。
○○はこの世の何よりも「友情」を大事にしていた。
だから髪を金髪に染めるように言ってきた少年をこの二年間に何度か疑っても、「そう考える自分は最低な奴だ!」と考えてはみじめな気分になった。
だがその瞬間、その少年が○○を利用する相手としか見ていなかった事を完全に理解した。
だが少年の裏切りによる絶望、怒りよりも前に、○○は「恐怖」に捕えられた。
「自分は母のように、目を患らって死ぬ。」
その運命から逃れられないと考えては、身体が路地裏の寝床で震えて止まらなかった。
そして誰からも相手にされない自分自身を社会の最底辺にいるクズだと思いこんだ。

ある日、路地裏にいた○○を一人の女性が見つめていた。
頭巾を被った女性で、名前を雲居一輪といった。
一輪が近づいてきたとき、○○は「何か」に体を持ち上げられた。

まるで巨大な腕に持ち上げられているようなのに、それに触れることはできない。
○○はそれが人の形をした雲のようなものであることと、一輪が歩いていることは分かっていたが、「何が目的なのか?」、「何処へ向かっているのか?」が理解できなかった。
そして一輪は命蓮寺という寺に行き、厨房で食事を作る者たちにこう言った。
一「彼に食事をさせてやりたいのですがかまいませんね!!」

出されたのはいわゆる「精進料理」というもので、比較的質素な食事だった。
しかし何年かぶりのまともな食事に○○は感涙した。
食事を終えるとまたしても雲に包まれ、今度は空を飛んでいた。
到着したのは竹林に囲まれた診療所。○○はそこに一週間の間入院した。
自分に「死」を招き、一生かかっても消えないとさえ思っていた目の腫れはたったの一週間で消えてしまった。
そして、入院から三日目に「彼女」がやって来た。

やって来たのは見事なまでの紫と黒のグラデーションの髪に、帯のような印象を受ける服を着たで、名前を聖白蓮といった。
○○は尋ねた。「なぜ僕なんかの為にこんなことをしてくれるんですか?」
白蓮が言うとことに、少し前から里で見かけた○○のことが気になっており、一輪や命蓮寺の者たちに彼を見かけたら保護するようにと言っていたのだそうだ。
○○は自分から生きる希望を取り上げていた「病」と「空腹」を取り払ってくれた白蓮にすっかりと惚れこみ、そして「この人は宗教家に違いない」と思ってこう頼んだ。
「僕には帰る家もない!何でもします!あなたの宗派に入信させてください!」
するとなんと、白蓮は彼に本気で怒った。
「自分があなたを助けたのは謝礼とか、信者がほしいからではない。」
「自分に「お礼」として入信するのは、あなたから自分に対する最大限の侮辱だ。」
……このような内容だった。
○○は怒られる経験は何度もあった。
食事が取れずに疲れ切って、寝床で身体を休めて寝ていれば誰かに怒られて蹴り起こされた。
タダ働きをしていた頃にも、磨き上げた商品に汚れが見つかれば怒られた。
でもこの「怒り」は「恨み」だとか、「嫌悪」だとか、人を侮辱するようなものは何もない怒りだった。
こんな取るに足らない自分自身のために本気になって怒ってくれた…彼女自身にはなんの得もないのに……

そして萎縮してベットの中で震えてしまった彼の頭を優しく撫でてやり、白蓮はこう言った。
白「あなたに必要なことは、知識を付けることです。常識的な知識を身につけなければ、「知ること」の基礎も身につきません。そして基礎が無ければ、入信した所で何も得ることはできないでしょう。まず学校に通いなさい。そしてそれを終えた時、その志が変わらなければ……私たちはあなたを心から歓迎しましょう。」
そう言い残し、白蓮は一輪を連れて帰って行った。
○○は里の半妖の女性が経営していた無償学校に六年間通い続けそして……晴れて命蓮寺の門下に下ったのだ。

「ガボ…ゴボボ…(白蓮様……あなたは僕にお聞きになった…「寺や仏教のために命を賭けられるか?」……と……僕は「いいえ」と答えた……でも、僕はあなたのためなら命を賭けられる………「死んでいた」僕を生き返らせてくれた人のためになら……命を賭けられる……!!)」
にとりは戸を伸ばした。
「のびーるアーム」は岩場に括りつけられているため、後は○○を回収してアームを引くだけなのだ。

にとり「あー……随分長い走馬灯っぽいの流れてるけどまだ諦めちゃダメだぞー。よいしょっと。しかし私が河童でよかったね。こうやって君を助けられるんだから。さて、誰かに見つかると厄介だ。今度こそずらかろう! でも白蓮にはどうやって手に入れたか言わないほうがいいね。彼女ならこんな泥棒じみたことで手に入れるよりも、まっとうにお金を稼いで買ってきたほうがずっと嬉しい筈だし」

名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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