???「響子、参拝客があまりの大声に驚いて腰を抜かしていますよ。ほら、怖くないから君も挨拶されたら挨拶を返して下さいな」

蓮の花を咲かせた頭。黄色い髪に黒色の混じった髪、赤い服装に虎柄の前掛け、そして手には槍。この人も人間ではないのだろう。虎……なのかな? 二人とも本当に危険はない様だし、せっかく元気な挨拶をされたんだ。返さないのは失礼だろう。慌てて立ち上がると二人にペコリとお辞儀して挨拶の言葉を発した。

虎のような妖怪はお辞儀し返すと自らの名を名乗った。

???「ようこそ『命蓮寺』へ。私は毘沙門天の使い『寅丸星』、そしてこの子は山彦妖怪の『幽谷響子』。命蓮寺は人も妖怪も受け入れる。だから私たちを怖がらないで」

よほど顔が引きつっていたのだろう。笑うようにと促す星。何とか笑顔(のつもり)で名乗ることは出来た。「アールバイパー」に乗り込んでから異常事態の連続なのだ。怖いとかそういうもの以前にどっと心に疲れが押し寄せている。とても笑えるような状態ではなかった。

星「む……、そう言えば珍しい服装ですね。もしかして外の世界からやって来たのでしょうか? 余程のことがあったのでしょう。よろしかったら少しずつでもいいのでお話を聞かせてください」

金髪の少女は本堂に目を向けると俺をそちらに招いてきた。響子は「ぎゃーてーぎゃーてー」と連呼しながら掃除の続きを始めている。

ここは素直に厚意に甘えておこう。これから行くあてもないし、もう陽も落ちる。それにあの恐ろしい亜空間妖怪「八雲紫」がいつ襲ってくるかも分からないし。

縁側に腰かけると丸くて大きな耳を持った少女がお茶を差し出していた。星が虎の妖怪ならば、この子は……ネズミの妖怪? 命蓮寺に人間はいないのだろうか? ちょっと素っ気ないお茶の出し方だが、俺が外来人であるということで少し警戒しているのかもしれない。

自分は今までの経緯を話した。分かる範囲で。

外の世界でゲーム機(彼女らにはゲーム機が何なのか分からなかったようなので外の世界の遊び道具と説明した)で遊んでいたら幻想郷に入り込んでしまったこと。
ゲーム機が幻想入りするはずだったのにゲーム機は武器(戦闘機と説明しても理解してもらえないだろうと思ってそのように表現した)に変じており、自分自身も幻想入りしてしまったこと。
そして危険なものを持ちこんだイレギュラーな存在ということで八雲紫に狙われていること。
そこをたまたま居合わせていた聖に助けてもらったこと。

その言葉ひとつひとつをじっと聞いてくれている星。妖怪といっても色々なものがいるようで、皆が皆問答無用で襲いかかるような奴ではないらしい。少なくとも彼女は良識を持ち合わせているようだ。

貴方「そうだ、聖さん! あの後紫の気をそらす為に決闘……ええと『弾幕ごっこ』だっけ? それを始めたんだ。押されていたようだけど大丈夫なのかなぁ……」

星「聖はそう簡単には屈しません! ……と言いたいところですが、相手悪すぎますね。私の読みが正しければ貴方の安全を確認し次第適当に撒くとは思いますが……あっ、聖!」

夕陽をバックにその白黒は見事なまでに映えていた。だが、彼女は勝利の凱旋を上げるわけではなく、どうにか逃げ切ったといった様子であった。

降り立つや否や聖はガクリと崩れ落ちる。自分含めて慌てて駆け寄った。

介抱する自分達に感謝の言葉をかけると、今日はもう休むと言い、部屋に閉じこもってしまった。

結局その後、ネズミの妖怪「ナズーリン」に案内され、自分も部屋をあてがわれた。部屋は埃っぽかったが贅沢を言える身ではない。座り込むと疲労感がどっと押し寄せてきた。

気がつくと見知らぬ世界に謎の戦闘機で迷い込み、この世界の管理者を敵に回した所を僧侶に助けられる。

文字通りの「駆け込み寺」ってやつだな。いつまでここで匿ってもらえるだろう。いつまでこんな危険な目にあうのだろう、考えていても仕方がない。ああ、まぶたが重いし、本当に寝よう……


銀翼と妖怪寺IIに続く……

名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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