鳴り響くは雷鳴ではなく地響き。あれだけの巨体が地面に落ちたのである。その衝撃は計り知れない。
衣玖が降り立つもその巨体の姿は見えない……かと思ったら傍の洞穴の中で瞳が光っていた。
衣玖「そんなに怯えなくても、私は敵ではありませんよ」
一緒に洞窟の中に入っていくと、紫の龍の頭部に寄り掛かる。真っ暗闇な筈であったが、その金色のトサカが目立っており、さらに眼光もあるので、洞穴の中は意外と明るい。衣玖はそんな龍の頬を優しく撫でる。
衣玖「そうだ、そういえば怪我をしていたのですね」
今も苦しげな唸り声を上げる紫の龍。そういえば先の戦いで胴体が抉れてしまっていたことを思い出すと、衣玖は懐から小さな果実を取り出した。
衣玖「天界の名物、桃ですよっ……というより桃しかないんですけどね。総領娘様が私の為にってくれたものなのですが、食べ続けると身体能力が上がるとかなんとか。お口に合うか分かりませんが、怪我にも効くかもしれません」
その巨体にはあまりに小さな果実。だが、臆することなく衣玖は龍の口の中に桃を投げ入れる。ゆっくりと咀嚼。幾分苦しげな声が和らいだ気がした。
衣玖「気に入っていただけました? 足りないようでしたら総領娘様に頼んでまた貰ってきます。えっ、総領娘様ですか? ちょっとヤンチャですが、本当はとっても優しい子でして……。ああ、天界についての説明もしなきゃいけませんね。天界はとても安らかで平和な所で、だから総領娘様にとってはちょっと退屈らしいのですが、このような平穏ってのは実はかけがえのないもので……」
長々と語りかける少女に紫の龍は嫌がるそぶりを見せず、まるで耳を傾けるようにしっかりと聞きこんでいるように見えた。
そんな中、紫の龍も心を許したのか、あちら側から今度は語り掛けてくれた。しかし、その内容は驚愕するべきものであったのだ。
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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