貴方「よくもっ! よくもぉっ!!」

残酷極まりない。悪趣味極まりない。俺の最も大切な人を俺の目の前で残虐な方法で殺されたのだ。すぐにでも青娥に斬りかかりたかった。しかし満身創痍の銀翼ではそれすらも不可能である。

青娥「本来は何としても屈服させてわたくしの傀儡にするか、それが無理なら殺してキョンシーにしたうえで隷属させるつもりでした。ですが、それはやめにしましょう」

青娥が手に力を籠めると、頭上の八面体が激しく金色に輝き始める。このまま俺だけを焼き殺すつもりか?

いや、そうじゃないぞ。枯渇寸前だったアールバイパーのエネルギーがみるみる回復していく。

青娥「○○、お前には残虐な拷問の末に死の安寧にたどり着くことも、生ける屍として永遠に隷属することすらも生ぬるい! 生きたまま、生きたまま孤独の中で絶望に苛まれ、朽ちてゆくのがお似合いだ!」

俺に魔力を注いでパンクさせるつもりか? いや、それも違うようだ。エネルギーは俺を介さずにアールバイパーにだけ注がれている。ますます意図が分からない。

エネルギー満ち溢れる銀翼、その周囲の風景がわずかに歪んだ気がした。

青娥「銀翼『アールバイパー』は超時空戦闘機。時を駆ける神の鳥。しかしその能力は封じられていた。忌まわしい妖怪スキマババアの手によってな!」

こいつ、まさか……。時空跳躍を暴発させるつもりか!?

青娥「機械のことはわたくしには分からない。だけど、過去に時空跳躍による作戦も行ってきたゴットヴィーンにはその心得があった。○○と引き合わせ、メンテナンスと称してアールバイパーの封印を解除させていたのよ」

あの時、大佐に機体を預けた時だ。あの時点で使えないようにロックされていた筈の時空跳躍機能を復活させていたんだ。今みたいな緊急の事態に備えて……。

ええいっ、そうはさせるかっ。銀翼にエネルギーが満ちているのなら今の青娥に抵抗も出来る筈。バーニアを噴射させて青娥の拘束から逃れた。

青娥「今さらわたくしから逃げても無駄ですわ。過剰なエネルギーの供給によってアールバイパーは間もなく何処とも知れぬ時代へと飛ばされる。果たしてそれは気の遠くなるほどの過去の地球か、それとも文明の滅んだ遠い未来の地球か……」

周囲の空間の歪みが大きくなり、周囲のなにもかもが光へ溶けていく。青娥の言う通りアールバイパーをどんなに激しく飛ばしてもその呪縛からは逃れられそうになかった。いや、そもそもがあまり激しく動かせなかった。エネルギーは満ち溢れていても修理はまるで施されていないのだから。

青娥「ちゃんとした時代に出てこれるとよいですわね。まあこんなあてずっぽうな時間旅行、大抵は時空の狭間に閉じ込められるのがオチでしょう」

何もかもが光に……。

青娥「くっ、くははははは! ゴットヴィーンの仇よ。時空の因果の届かぬ袋小路で、何もかもに絶望して朽ち果てるがよいわ! あの八雲紫のようにっ!!」

そして次の瞬間、アールバイパーは俺ごとこの時代から姿を消した。行き先も定まらぬ強制的な時空跳躍の波に飲み込まれて……。


銀翼と妖怪寺∀CE エピローグに続く……

名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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