(○○がお空と別れた次の日の夕方、霧の湖……)

夕暮れの陽光を乱反射させる水をたたえた霧の湖。昼はその名のとおり濃霧が立ち込めるのだが、それも夕方になると晴れてきてこのように見通しがよくなる。それゆえ、衣玖をハラハラとさせている。彼女の視線の先は湖の水面。目を凝らしてよく見ると紫色の細長い龍がその中を泳いでいるように見えた。

あれから紫の龍と衣玖はさらに親睦を深めたようであり、今では衣玖が異変の前兆を知らせに行く時を除いて常に一緒にいる。紫の龍も優しく接してくれる彼女に心を開いたらしく、色々とコミュニケーションを取っているようだ。

衣玖「ダーク……ヘリオス? それが貴方の名前なのですか?」

その過程で衣玖はこの紫の龍の名前も知ることになったのだ。相手を知れば知るほど、追手だけではなく、外来人に厳しい態度を取る幻想郷の住民にも見つかるわけにはいかないと悟るのであった。

それで選んだのがこの霧の湖。昼は濃霧で、夜は闇で姿をくらませることが出来るのだ。

だが今はマズイ。ここも視界の良いタイミングがあるのだ。それが早朝と、この夕方である。

衣玖「ダークヘリオスさん、夜は闇に紛れることが、昼は霧に紛れることが出来るとはいえ、やはり朝と夕方は厳しいものがありますね。いいですか、今の貴方は湖の蛇です。決して水面から大きくはみ出してはいけませんよ?」

流石にずっと水中にいるのは窮屈らしく、今は衣玖に見張られながら頭部だけひょっこりと出している。どうやらわかさぎ姫と談笑しているようだ。

そう、衣玖がダークヘリオスの潜伏場所に霧の湖を選んだ理由はもう一つあったのである。それは大人しい妖怪達の手によって設立された「草の根妖怪ネットワーク」の存在。ここ霧の湖にはそのネットワークに所属しているわかさぎ姫の住まう湖でもあったのだ。

衣玖が彼女にこの紫の龍の身の上を話すと、仲間入りを快諾してくれたのだ。今ではすっかり打ち解けている。

太陽はその最後の光を照らしながらさらに沈みゆき、ひとまずはやり過ごせるだろうと安堵の息を漏らす衣玖。じきに夜の帳が降りてきてあの巨体を隠してくれる。

しかし、ダークヘリオスはというと上空を一瞥すると、いきなり湖から飛び出してしまったのだ。

衣玖「ちょ、ちょっと! もう少しだけ待ってくださいって!」



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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