(時間は少しさかのぼり、某所……)


どうした、こんなにも脆いものなのか?



巨大なマッコウクジラ型の戦艦とそれを護衛するかのように追随するイルカ型の小型戦艦が3隻。更にその後ろで浮遊するは軍師と思われる女性。周囲の建物は煙を上げて倒壊しており、今まさに最後の砦に向かわんと進軍しているところである。堅牢さを誇りながらも華美な様相の御殿。

その砦の中はほとんどもぬけの殻であったのだ。ほんの数人を除いて既にどこかへ避難したのだろう。上空からの砲撃に晒されながらも片翼の少女は紫色の宝玉に祈りを捧げ続ける。

片翼の少女「このメッセージを受け取った方へ……私の星を助けて! 今、未曽有の脅威にさらされているのです。私の名は……」

両目を硬く閉じ、ブツブツと祈る少女をどうにか避難させようと2人の近衛兵が騒ぎ立てる。どちらも兎の耳が生えており、ただの人間ではないことが分かる。

近衛兵A「槐安通路への避難は我々を除き完了しました。さあ、サグメ様もお逃げください!」

しかしサグメと呼ばれた少女は微動だにしない。ただ、拒否するという意志は明らかではあった。

近衛兵B「しかし……。最終防衛ラインは先程突破されてしまったんです。じきに奴らがここにやってきます。あの忌まわしき『死を司る者』がっ! もう時間がないんです!」

祈りを込められた紫色のパワーストーン、これは自分が追い詰められている状況であることを知らせるいわばボトルメールのようなもの。サグメは宇宙へこのボールを放ち、救援を待っていたのだ。しかし救難信号が力あるものの元に届く保証は全くない。だからこそ少しでも多くのパワーストーンを用意したかったのである。

そしてこの紫色のボールこそが幻想郷で「オカルトボール」と名付けられて、一悶着起こしていたことを彼女は知る由もない。

近衛兵A「だからって襲われて死んでしまったら元も子もありません! さあっ!」

それでもサグメは動こうとしない。両目を硬く閉じ、パワーストーンに祈りを捧げ続ける。

近衛兵B「こうなってしまっては梃子でも動かない。仕方ない、我々で時間を稼ごう」

二人の近衛は互いの顔を見合わせると、ダッとこの場を離れると、近くに格納させていた青い戦闘機に乗り込む。それぞれには大きな一本腕が生えているのが特徴的であった。

近衛兵A「『エンディミオンMk-III』、発進する!」
近衛兵B「『アストライアーMk-I』、おそらくこれが最後の任務だ。派手に暴れるぞっ!」

蒼き戦斗機が巨大なマッコウクジラに食らいつかんと飛び立った。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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