戦闘はほぼ一方的なものであった。あっという間に弾幕に晒されて防戦一方であったのだ。月の技術力をもってして生み出された戦斗機は相手の武器をその腕で奪い取るという特殊な戦い方を行う。しかし、あまりに頑丈に出来ていたマッコウクジラ型の戦艦の兵装はエンディミオンの握力をもってしても奪い取ることはできない。

そもそも砲撃が凄まじすぎて接近することすらままならないというのが現状だ。

近衛兵A「ヒッ!」

無数の砲台に狙われて怯むエンディミオンMk-III。

近衛兵B「怯むなっ! 少しでも長い時間、我々に注意を引きつけろ!」

射線上に躍り出たアストライアーMk-Iが恐らく後輩であろう近衛兵を庇う。大きな腕を突き出して、弾幕から身を守っているようであった。

そうやって時間を稼いでいる二人は強敵と対峙しながら、片翼の少女が移動を開始したのを確認した。ようやく動いてくれたかとひとまず安堵の息を漏らす近衛兵たち。

近衛兵A「サグメ様が避難を始めた。任務終了だ」
近衛兵B「よし、我々も避難を……クソッ、振り切れるかっ……!?」

煙を吹き出しフラフラとどうにか飛行を続けるアストライアーMk-I。これでは満足に速度も出ないだろう。動きの鈍った戦斗機に砲門が一斉に向けられる。

近衛兵B「お前は先に行くんだ。サグメ様を護衛しろ!」
近衛兵A「そんなっ!」
近衛兵B「アストライアーはもう持たない。むざむざ撃たれて死ぬくらいならば……」

それだけ言い残すと最後の力を振り絞り、一直線にマッコウクジラ型の戦艦へと突っ込んでいく。

近衛兵B「うおおおおっ! 月に栄光あれ、地球に慈悲あれっ!」

最後の意地をぶつける近衛兵。マッコウクジラの頭部に小さな爆発。どうやら大したダメージは与えられていないようだ。そんな先輩の最期に目をそむけるように、残された一人は躊躇いながらもサグメの後を追った。


逃がすな! 奴も抹殺しろ!



しかし、逃げる近衛兵とサグメに銃口が再び向けられている。そして、それらが一斉に火を吹き始めたっ……!

幾多もの爆撃に光学兵器が飛び交い、土埃が晴れた後……。そこには無人と静寂が残るのみであった。動くものはもはやこの場に存在しない。


やったか? いいや、地球にでも逃げおおせたか。
まあどちらでもいい。もはやこの月で私に歯向かう者は一人もいないのだからな!



マッコウクジラ型の戦艦の上で両腕を広げながら高笑いを続ける軍師。


ふは、ふはははは! 嫦娥よ、貴様が愛する都など、所詮はこの程度ということだ。
どうだ見ているか? 嫦娥よ、見ているかー!



一通り笑い続けると、平静さを取り戻し一言。


まあ見ていないのならそれでも構わない。それならば地球に逃げおおせた月の民を一人残らず蹂躙するまで!
身をもって思い知らせてやるだけのこと。嫦娥、待っていろよーっ!





名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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