そういえば成り行きでここまで連れてきてしまったが彼女が何処から迷い込んできたのかを聞いておかなくてはならない。恐らくは人里のどこかだろうが……。
貴方「驚かせてしまったね。すぐに里まで送るよ。どのあたりに住んでいたんだい?」
黒帽子の少女「……?」
俺はなるべく聞き取りやすく、なおかつ恐怖心を与えないようにゆっくり優しく聞いてみた筈であった。だが、不安げな表情で周囲をキョロキョロすると黙り込んでしまう。
白蓮「きっとパニック状態に陥っているんですよ。あれだけ奇妙で怖い目に遭ってきたんですから無理もありません。それではもっと簡単なことを聞きましょう。貴女のお名前を教えてください」
ニコリと微笑みながら白蓮さんは背中を撫でながらまるで子供をあやすように問いかけている。やはりこういったものは白蓮さんの方が上手だ。
黒帽子の少女「名前……私の名前、分からないの」
白蓮さんの腕の中で縮こまりながら少女は消え入りそうな声で答える。つまり記憶喪失ってやつなのか?
白蓮「そう、覚えていないのですね。大丈夫、無理に思い出さなくても構いませんよ。それでは何か覚えていることを教えて頂戴な」
黒帽子の少女「……一つだけ覚えているのは友達の名前だけよ。メリーっていうんだけど、途中ではぐれちゃってどこにもいないの。早く探さないと……」
その後も黒帽子の少女は自らに残った記憶を洗いざらい話してくれた。メリーと電車に揺られとあるパワースポットを調べに行ったものの、メリーが謎の黒い手に浚われてしまいはぐれてしまうという怖い夢を見たこと。気が付くと診療所のようなところで寝かされていたこと、外に出るとタコのお化け(シーマ艦の「エイトフィートアンブレラ」で間違いないだろう)に追いかけまわされたこと、竹林のピラミッドから赤い戦闘機が出てきてタコのお化けを倒してくれたこと、そして命蓮寺まで迷い込んだこと……。
電車の夢を見るくらいだから外の世界の出身であることは間違いない。外来人が突然幻想郷に入り、しかも侵略者であるシーマに襲われたとあってはまともな精神状態にはなれないだろう。
白蓮さんはギュッと抱擁しながら、彼女の話を聞きながら「うんうん」と頷いていく。
黒帽子の少女「今頃メリーも一人ぼっちで震えているに違いないわ。ねぇ、お姉さん。メリーは大丈夫だよねっ? ねぇっ!?」
自分の名前を忘れてまで記憶に残った友の名前。彼女にとってそれだけ大切な存在だったのであろう。
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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