(幻想郷、永遠亭前……)

俺が、アールバイパーが月に向かう為にはこの地球の大気圏を突破しなくてはならない。しかし高温に弱いアールバイパー単体ではここを突破することができない。そこで俺が頼ることになるのは永遠亭のお姫様である。彼女の宝物の一つに「サラマンダーシールド」なるものがあり、過去にこれを用いて宇宙に出たことがあるのだ。

それを借り受けるために永遠亭までやって来た。ここもシーマに襲われたとあって建物外部に損傷が見られるが、恐らくはいち早く首領蜂隊が駆けつけたのか、紅魔館ほどひどく荒らされているわけではなかった(そもそもあそこが荒れていたのはフランが暴れていたのが一番の要因だったが)。

銀翼から降りて(衣玖さんと朱理は外で待機させる)診療所を突っ切り奥へと進むと彼女はいた。そういえば輝夜とは長く顔を合わせていなかったな。

輝夜「○○、本物ね! やっぱり本物は違うわー」

恐らく偽銀翼異変での出来事を言っているのだろう。ここもバイオレントバイパーに襲撃されていたのだ。そう言いながら人懐っこい笑みを浮かべて頬をスリスリとしてくる。随分と懐かれているようだ。この調子では話が出来ないので、しばらくこうさせておいて、落ち着いたころを見計らい俺から切り出す。

貴方「それより輝夜、俺がここに来たのは……」
輝夜「それは出来ないわ」

用件も言わないうちに断られてしまった。

輝夜「サラマンダーシールドでしょ? ここを襲ったでっかい魚を倒しに月まで行くんでしょ? 無理なのよ」

代わりに彼女が手渡したのは古めかしい望遠鏡。装飾が派手であり言われないと万華鏡と間違えてしまいかねない。どうやらこれで空を見て見ろという事らしい。

言われたとおりに望遠鏡で空を覗き込むと今もシーマの巨大戦艦と首領蜂隊が一進一退の戦闘を繰り広げていた。

輝夜「あんなにドンパチやってるところに行ったら傷ついてしまうわ。あくまで熱に強いだけで、物理的なダメージにはあまり強くないのよ」

確かに宝物に傷をつけてしまうよな。俺はここにきて自分の考えがいかに浅はかか思い知ることになった。

輝夜「壊れちゃったら○○も地球に帰れなくなるわ。そんなの嫌だもん!」

何よりもの宝は俺という存在らしい。この辺りが彼女を人格者たらしめているところであろう。どんなに見た目が幼くても、どんなに変な噂が蔓延っていても、やはり人の上に立つものは相手を気遣うということに秀でているのだ。

ううむ、俺の完敗だ。そう言われるとこの作戦はなしだな。諦めて他の手段を模索するとしよう。俺は輝夜の部屋を後にする。後ろでは輝夜は申し訳なさそうな顔を浮かべていた。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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