地上の屋内に比べると気温が低いものの、白玉楼の中もある程度の温度が保たれていた。蓮子もようやく上着を脱ぐことができる。とある和室に通された白蓮と蓮子。幽霊の雑用係が二人と幽々子にお茶を振舞う。これまたなぜか春らしい若々しい香りが広がる。

幽々子「それで、白蓮さんはいなくなった霊夢を探していたのね?」
白蓮「はい、どうやら妖夢さんとオカルトボールをめぐって戦っていたらしいので、その時のことを聞こうとしたのです」

珍妙な紫色のボールを追いかけていた博麗の巫女の名前、それが出た瞬間に幽々子の表情は険しくなる。

幽々子「そう、霊夢を探すためにここまで? ……ねえ、紫もオカルトボールの異変以来姿を現していないのよ」

白蓮の目的は霊夢だけでなく姿を消してしまった紫の捜索も含まれていた。だが、彼女についての手掛かりを探るのは霊夢以上に骨が折れることである。何せスキマで神出鬼没な上に何を考えているのかなんてごく一部の「例外」を除いて分かりっこないのだから。

そして「例外」の一人たる幽々子も紫がどうなったのかを知らず、案じているのだ。

白蓮「彼女ほど幻想郷を愛している人はいないでしょう。こんな大ごとになっているのならばすぐにでも現れる筈。なのに気配すら見せない。その……幽々子さん、二人を『ここで』見かけませんでしたか?」

何処か申し訳なさそうに肩をすくめながら白蓮は聞く。質問の意図を読み取ったのか、幽々子は少し感情的に声を高ぶらせながら返答した。

幽々子「見てないわ! 私は紫も彼女が大切にしている巫女も絶対に見ていないし、こんな形で紫とは会いたくない!」

冥界で姿を見る、それはもはや生命が終わりを告げていることを意味する……本来は(妖々夢での異変以来、生死の境界が曖昧になっているので)。だが、この発言こそが希望へ向かう道筋となるのだ。

白蓮「不快になるようなことを聞いてしまってごめんなさい……。でも、幽々子さんがここで二人を見かけていないってことは、二人とも生きているんですね?」

自信ありげに大きくうなずく。それが分かっただけでも収穫ではある。気まずくなったのか、立ち去るべく立ち上がった白蓮を呼び止めたのは幽々子である。

幽々子「永遠亭よ。今の異変もオカルトボールの異変もどうやら月に与(くみ)する勢力が怪しいの。その周囲を調べてみるといいわ」

親友の安否を案じる少女は白蓮から目を逸らす様に一言。

白蓮「ありがとうございます。紫さん、絶対に見つけて助け出して見せます!」

白蓮も振り向くことなく蓮子と一緒に冥界を立ち去った。



その様子を誰に気付かれることもなく、扇風機の羽根型の機械が一部始終を凝視していた……。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

お気に入り登録登録済み一覧

セーブデータ
新規登録・ログイン・マイページはこちら