元の人のものに戻った手や指先を動かしていく。うむ、異常なしだ。俺は確かに人間に戻っている。

貴方「とても信じられないが、治っている。こうなってしまえばもはや人間に戻れないと思っていたのに」
依姫「本来は地上の方にこのようなことはしないのだけど、今は状況が状況ゆえに。月の都もあの有様だし、悔しいが私は負けてしまったのよ。あの無数の海洋生物たちに」

悔しそうに空を仰ぐ依姫。敷き詰められたグリッドの空には見事に丸い月が映し出されていた。

依姫「何より貴方は八意様の勅命を受けるような人間。まさか大事な使命を途中で投げ出すわけにもいくまい。というかそんな男なら、ましてや八意様の頼みを投げ出すようなゲス野郎なら問答無用で斬る」

怖いというか実直というか……。とにかく彼女が敵ではなくてよかった。そうつくづく感じさせられる。

依姫「それに貴方は穢れを恐れずに、大きな敵にも果敢に挑む勇気を持ち、なおかつ地上の人間にしてはなかなかに強い。とても気に入ったわ! 戦い方もどこか似ているし、私が稽古をつければきっと更に輝ける。ここでしばらく私の元で修業をする気はない?」

何処か満足気にうんうんと頷き、弟子としてスカウトまでしてきた。いや、今は修行をしている場合ではないし、地上では待っている人もいるのだからその申し出は断らざるを得ないのだが……。

豊姫「んもぅ、好きなら好きってそうストレートに言っちゃえばいいのに。『一緒に月で暮らしませんか?』とか……いたぁい!」
依姫「恋愛感情としての『気に入った』じゃないっ! それよりお姉さま、居住区を案内してあげて」

自らの姉にポカリと一撃。渾身の鉄拳を食らわせると、依姫はそそくさと立ち去ってしまった。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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