永遠亭の医療技術の高さから、彼女が元々いた月の都でも高度なものが受けられると思っていたが、人が誰もいないのでは話にならない。内部もひどく荒らされており医療器具も壊されているか何者かに持ち出されたかといったところである。

ベッドらしきものを見つけたので俺は銀翼から降りるとひとまずサグメをそこに寝かせる。抱き上げたその体は大きな翼に似合わずとても華奢であった。やはり月の民と言えど女の子なんだよな……。

貴方「ディメンションダイバーに襲われたんだ。翼以外にも怪我をしているかもしれない」

しかしどうしたものか。医者が残っていれば任せることも出来たのだが人の気配がまるでない。

朱理「マスター、簡単な治療程度なら任せなさい。ある程度の薬は用意できるし、医療器具がない場所で負傷した場合のマニュアルもインプットされているわ」

おお、さすがエレメントドールだ。本来はパイロットが不時着して負傷した時にその能力が発揮されるものだろう。それに傷を確認するにはある程度服を脱がせる必要もある。男の俺よりも女性型アンドロイドの方が抵抗も少ない筈だ。

貴方「それは助かった。ならば朱理、サグメの様子を……」

しかしかつてないほど鋭い視線でサグメは朱理を睨み付ける。警戒しているのだろうか? しばらく睨み合いになって先に口を割ったのはサグメの方であった。

サグメ「○○がいい……」

ポツリとそう一言。いや、そんなこと言われても困る。それでも俺は朱理の治療を受けるようにと説得をするが、今の応対で朱理がへそを曲げてしまったようである。

朱理「あっそう! じゃあいいわ。アンタは別にマスターでも何でもないし」

マスターである俺が何度か説得を試みるが、朱理は機嫌を損ねたままだ。仕方がないので衣玖さんに治療の依頼をするが……。

衣玖「貴方に体を診て欲しいと言い出した意味、それを考えなさい。私はダークヘリオスのお世話で忙しいので」

訳の分からないことを言って、とぐろを巻いて寝息を立てているダークヘリオスの傍へと行ってしまった。

貴方「ならばネメシス、治療のサポートを……」
コンパク「……」

どうやらコンパクによるとネメシスとゆっくり霊夢は機嫌を損ねた朱理の後についていってしまったらしい。なんでもまだ残っている薬をこの廃墟の中から探し出すつもりらしい。

なんでこんなことに……。ああそうか、サグメが口に出してしまったので「男の俺がサグメの治療を受け持つ」というあり得ない事態がひっくり返って実現してしまったのか。やれやれ、難儀な能力だ。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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