というわけでサグメと二人っきりになってしまった(コンパクもあの後ネメシス達と同行してしまったので)。

現状を憂いていても仕方がない。結局簡単な傷薬すら見当たらないので、それはネメシス達に任せるとして、俺も今できることから進めていくことにしよう。

貴方「まずは傷口をキレイにしないとな」

綿月姉妹のいる集落にたどり着く前にシーマ艦に襲われたのだ。俺も地面に叩きつけられるのは見ていたので、まずはこびりついた血や泥を拭う。どういうわけかそれだけでも体の震えが収まった気がした。

月の民が穢れたものを忌避するというのは本当らしい。特に血液を拭き取ると心なしか嬉しそうにする。

貴方「サグメ、教えてくれ。どうして朱理ではなくて俺を選んだんだ?」

脚の擦り傷を探しながら俺は訪ねる。治療をするということは体に触れるという事でもある。普通なら男である俺ではなく、女性型でありなおかつ多少の怪我の処置にも精通している朱理の方が適任な筈であるから。しばし黙り込んだのち、ポツリと答えるサグメ。

サグメ「○○のこと、もっと知りたいと思ったから。月の民が貴方達地上人の常識を逸脱した存在なのは何度も目にしてきたはずなのに、貴方は全く怖がることなく接してきたから」
貴方「相手が誰だろうと関係ないさ。困っている人がいたら手を差し伸べる。種族なんざ俺にとっては全く関係ない。びゃくれ……聖様だってきっと同じような行動を取る筈だ」

わずかに顔をしかめる片翼の少女。水が傷にしみたのかもしれない。しかしまあそれを聞くためだけに二人っきりになりたかったのかな?

サグメ「神々の能力を借りて超人的な強さを誇る依姫に、多くの技術と瞬間移動の能力を使いこなす豊姫。それに、口にした事象を逆転させる私……。こんな人ならざる能力を持っているというのに貴方はまるで物怖じしない」
貴方「大きな運命の潮流に翻弄されながらも時には従い、時には抗い、俺はいつだって己の信じた道を進んできた。だから逆転されようが俺には関係がない」

ある意味では俺だって幾度となく運命をひっくり返してきた。もっとも俺だけの力ではないのだが、どこか俺とサグメは似ているのかもしれない。

さて、こんなものだろう。傷の場所を見つけて清潔にしてやったので、あとは傷薬が見つかるのを待つのみである。

貴方「よし、目に見えるような怪我はこんなものだろう。他に痛んだり動かない場所は?」
サグメ「……(ふるふる)」

無言で首を横に振っている。ということは、骨折したということはないだろう。朱理の治療を断ったのはあまり大ごとにしてほしくないと思ったってことだろうか?

貴方「よし、あとは傷薬だな。ここで少し休んだらいよいよシーマの本拠地に乗り込む。あの魚どもの親玉との決戦も控えているし、ここで十分に英気を養って……」

今も薬を探しているであろうネメシス達に加勢するべく、廃墟と化した診療所の奥へ向かおうとする。そんな俺の右手は細い指にギュっと掴まれた。振り向くと眼だけで「行かないで」と懇願するサグメの姿があった。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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