いきなり手を握られたことに驚き戸惑っていると、後ろからサグメは俺に抱き付いてきた。よほど離したくないのか、片方だけの翼までもが抱きしめるように俺に絡みついている。

サグメ「怖いの。怖くて胸が張り裂けそうなの……」

耳元でボソリと囁いている。今も時折シーマの偵察機が行き交う月の廃墟。圧倒的な技術で今まで負けなしだったの月の都がいとも簡単に陥落してしまったのだ。シーマに屈して煌びやかだった都が崩壊していく様は、自らが信じていたものが崩れ落ちていくことも意味する。

恐らくは月の都の歴史上で初の敗北であろう。当惑し恐怖を覚えるのもよく分かる。体の傷ではなく、心の傷はかなり深いようである。それを埋めて欲しいと彼女は俺を頼っているのだ。ならば俺が応えなくてはいけない。朱理にも衣玖にもそれは出来ず、俺になら秘めたる思いを伝えられると思ってくれたのだから。

サグメ「絶対に勝てない相手を前に、ひっくり返りようのない運命を前に、我々は恐れおののき、ただ助けが来るのを待つことしかできなかった。だけど○○は違ったわ。自分よりもずっと強大な相手に臆せず挑み、敗れても何とか這い上がろうと、追いすがろうとあがくことが出来た」

まあ諦めの悪さにはちょっと自信がある。思えば幻想郷での俺は何度やられて倒れても、再び立ち上がり足掻いて喰らい付いて、そこから突破口を見出して窮地を脱するという機会が随分と多かった気がする。

貴方「まあ……そういう言われ方すると、ただ往生際が悪いだけに見えるけどね」
サグメ「いいえ、これもある意味運命をひっくり返す能力。素敵よ……///」

腕を回されて、胸元にまで伸びた手。柔らかな感触と甘い香りを背中に浮けて、俺は固まっていた。

サグメ「分かってる。これをいつまでも続けてしまうと○○の大切なものを奪ってしまう。だけど、今だけは……///」

俺はサグメの冷たい手をぎこちない動きながらもしっかりと握りしめた。心折れた彼女の支えになれるのは他でもない俺だけなのだから。そこで言葉は交わされることはなかったが、確かに意思の疎通があった。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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