(その頃、妖怪の山頂、守矢神社……)

わずかな風に揺られる山頂の湖、そこに突き立てられていたのは極太の御柱。その上で神奈子はあぐらをかき、両目を閉じて瞑想を行っていた。シーマの軍勢はますます幻想郷に近づくことは稀になっており、山の妖怪の中には既に異変は終息したと考える者も出てきていた。

だが神奈子はその筈はないと踏んでいたのだ。

神奈子「なあ諏訪子」

御柱の根元で気持ちよさそうに泳いでいるもう一柱の神に片目で視線を送りながら問う。

諏訪子「なぁに?」
神奈子「シーマが幻想郷に降り立ってこなくなってから随分と経ったな」

話しかけられたのを契機にピョンとほとりに向かってジャンプする諏訪子。

諏訪子「あの『首領蜂隊』って奴らが追いやってるんだろう? あの厳ついロン毛のおっさん……えーっと何て名前だっけ?」
神奈子「『ゴットヴィーン・ロンゲーナー』だ。この幻想郷を守る様に戦ってくれている彼らなんだが何か引っかかる。この名前、どこかで聞いたことがあったような……? それに早苗と連絡がつかないことも気になる」
諏訪子「えー、私は全く聞き覚えがないよー?」

首をかしげる諏訪子の仕草はさながら幼子のようなものであった。こんな見た目だが祟り神なのだから世の中分からない。その直後湖がわずかに若草色の光を宿した。

神奈子「なんだ?」
諏訪子「早苗だよ、この感じは早苗のものだ!」

澄んだ音とともに薄緑色に発光した湖が揺れ動く。波紋は円形ではなくいびつな形を描いていく。

諏訪子「なんだろう、何か文字に見えない? 波紋があんな形に広がるなんて、早苗がなにか奇跡を起こしたんだ」
神奈子「ちょっと黙ってて諏訪子。今読んでいるところだ」

御柱の上で目を凝らしながら神奈子は水面の波紋を読み上げていく。

神奈子「『首領蜂隊の空母に囚われている。奴らは敵。ロンゲーナー大佐の本当の目的は……』」

だが、次の瞬間フッと光が失せて湖の波紋も元の円形に戻ってしまった。

神奈子「やはり胡散臭い連中だとは思っていたが……」
諏訪子「大変だ、これは救難信号だよ。今すぐ助けに行かないと!」
神奈子「直接殴り込んでも勝算は薄いだろう。何せ幻想郷中に現れたシーマをあっという間に撤退させたのだから。数が尋常じゃないことは容易に想像がつく。下手に刺激したら蜂の巣をつついたようになるだろう。そこで、私にいい考えがある」

御柱から飛び降りると、そのまま守谷神社へと走っていった。

諏訪子「なるほど、あの空中空母を蜂の巣に見立ててるんだね」

諏訪子も遅れて走り始める。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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