純狐「よくも……」

このしんみりとした空気を引き裂いたのは純狐。目の前で母子のドラマを見せつけられたのである。自らが決してたどり着けない舞台を目の前に、彼女は悲哀ではなく憤怒の涙を浮かべていた。

純狐「よくもこの私の目の前でッ!!」

その勢いのまま詰め寄る先はサイバリオンでもサグメでもなく俺自身だった。

貴方「お前はもはやシーマを生み出すことも使役することはできない。認めろ、お前の負けだ」

サグメも後ろでその通りだと言わんばかりに頷いている。が、純粋な憤怒となった彼女がそれで止まる筈もなかったのだ。直後、純狐との戦いで出来た腕の傷が一気に開き始める。

純狐「殺してやるぞっ○○っ! その腕の穢れを純化して殺してやるっ! お前さえいなければ地上と月の民が結託することもなかった、はぐれシーマを仲間もすることもなかった。そして……こんなおぞましい茶番を見せつけられることもなかった!」

純粋なる殺意。こんなものに当てられてしまってはひとたまりもない。腕に激痛に俺はコクピットの中でのたうち回る。

衣玖「やめなさい、彼に手をかけたところで事態は好転しませんよ!」

しかし彼女の言葉など耳に入っていないらしい。それほどまでに俺に激しい憎悪を抱いているのだ。純粋ゆえに視野も狭いのだろう。まるで効く耳を持たない純狐にサグメも後ろでオロオロしていた。

純狐「はははは! 泣け、喚け! いくら騒いだところで純化した『死』は容赦なく襲ってくるぞ!」

純狐はわざと苦痛を与えながら俺を処刑するつもりだ。腕の皮がひっくり返るのではないかというほどの激しい痛みに意識も朦朧としてきた。

薄れゆく意識の中、俺の耳がキーンと高く耳鳴りを始めた。ああ、あまりの痛さにおかしくなってしまったのか……いや、あの音は耳鳴りでも幻聴でもないぞ。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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