生命の灯が消えかかっているというのに、彼女の口がわずかに動いた。それは白蓮ではなく、蓮子に向けられた言葉。弱弱しく蓮子の手を握りながら苦し気に言葉を紡ぐ。
藍「お前だけが……お前だけが幻想郷の希望だ」
蓮子「あ、あ……」
傷口を抑えていた藍が放心する蓮子の手を取る。
藍「何があっても……どんな手を使ってでも……お前は生き抜くんだ」
蓮子「ああっ……」
蓮子の手が妖獣の血に染まりゆく。
藍「そうでなければ……幻想郷に未来はない……。たのんだ……ぞ……」
蓮子の手を握っていた九尾の狐の手がダラリと力なく落ちる。
最後の最後まで藍の表情が緩むことはなかった。その魂は傷付いた肉体から離れ、天に昇っていく。白蓮は反射的に手を合わせ念仏を唱えていた。蓮子はその亡骸に顔を埋め大泣きしている。その白黒の服が赤黒い血でさらに染まっていく。
だがもはや戦場と化した幻想郷に死者を偲ぶ猶予など少しも残っていないのであった。次々と首領蜂隊の兵器が押し寄せて白蓮達をも始末しようと砲撃を始めたのだ。
白蓮「ちょっと厳しいかもしれませんね……。でも、○○さんが帰ってくるまで倒れるわけにはいきません。ここは一度退いて体勢を立て直した方が良さそうです。蓮子さん、まずは撤退しましょう……蓮子さん?」
尼僧の呼びかけにまるで反応せず、藍の亡骸の前で呆然と立ち尽くしている蓮子。泣き腫らした赤い瞼で白蓮に力なく視線を送る。
蓮子「行かなきゃ……。急がないと……間に合わない!」
視線の定まっていない目つきをした蓮子は白蓮を押しのけてどこかへと走り去ってしまった。
白蓮「ちょっと蓮子さんっ、一人で行動しては危ないですよ! 待ってください!」
それを追いかけようとする白蓮。だが、首領蜂隊の戦闘機の方が圧倒的に反応が早く、一斉に蓮子に群がる。その様子はスズメバチというよりかは、そのスズメバチを蒸し殺そうとするミツバチに見えた。
白蓮「かくなる上は……超人『聖白蓮』っ!」
全身を魔人経巻の光が覆う。まるで瞬間移動でもしたかのような速度で戦闘機の群れまで一気に近づくと、一気にそれらを拳の一撃で吹き飛ばす。周囲で戦闘機が地面に叩きつけられて爆発する中、白蓮は着地。
白蓮「蓮子さん、こういう時に勝手な行動をするのは危険……あらまあ!」
しかし蓮子はそれでもどこかへと走り去ろうとしている。今度こそ保護しようと白蓮も後を追って走ろうとするが……。
白蓮「地震っ、それも大きい!」
突然の地面の揺れに白蓮はバランスを崩してしまう。そんな中、蓮子はまるで地面など揺れていないと言わんばかりにスイスイと走り去ってしまうのであった。
銀翼と妖怪寺∀CE XV後編に続く……
名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
お気に入り登録 / 登録済み一覧