(その頃チルノ達は……)

地底へとつながる洞窟「幻想風穴」へと飛び込んでいった1機の超時空戦闘機に1人の魔法使い、そして数隻のバイド艦隊……。

その様子を放心しながら眺めていたのが大妖精である。

大妖精「リリーちゃん、リリーちゃんが……」

ガタガタと震え、炎と消えた友達の名前をうわ言のように何度も口にしながら。その様子を見て彼女なりに神妙な面持ちをしているつもりなのがチルノである。

チルノ「ありゃ見事に『一回休み』ね。明日になるか一週間後か、まあ遅くても次の春にはまた元気な顔を見せてくれるに違いないわ!」

そう、○○は知る由もなかったが、妖精という種族はその肉体を滅ぼされても媒体となる自然が残っていれば一定時間後に復活するのである。

そんな特性を持ち、更に基本的には人間より力の弱い妖精達をうっぷん晴らしに使う心無い人間も少なくない。大妖精には○○達がそんな心無い人間の一人なのではないかと疑念の念を抱いていたのだ。

大妖精「そうだけど、あんな酷い事……彼らはおかしくなっていたとはいえ私達の友達を殺しちゃったのよ。ねえチルノちゃん、あの妖怪さん、ええと『愛弟子』だっけ? 彼は本当に救世主なの?」

永遠亭をバクテリアンが侵略した時、チルノは湖の妖精達に『アールバイパーは救世主だ』と言いふらしていたようだ。もちろん、彼女が一番言いたかったのは銀翼の武勇伝のことではなくて、チルノ自身がそのアールバイパーを鍛えた師匠だという事であるが。『あたいは凄い奴の師匠だから、あたいはもっと凄い、つまり最強!』とのこと。

当初はその凶行に戸惑っていた氷精ではあったが、すぐにニヤリと笑みを浮かべるとゆっくりと頷いた。

チルノ「そりゃあたいも最初はビックリしたけどさ……。でも○○は、あたいのマナデシかつえーえんのライバル! あたいの次に最強のアイツは無暗に弱い者いじめなんてしないわ。あれには深い訳があるとしか思えないな。『イヘン』だとか『オセン』だとか言ってたし」

何処かで聞きかじったバイド汚染の話のようである。もちろんチルノがその全容を理解している筈はないが、妖精にとって自然の汚染はもっとも忌むべきもの。とんでもない単語が飛び出したものだから大妖精は目を思い切り見開いた。

大妖精「お、汚染!? チルノちゃん、その話は本当? それって異変で幻想郷が汚染されているってことよね。そんな事されたらリリーちゃんはもちろん、私達も……」
チルノ「永遠に休み、消滅しちゃうよ。やっぱり、アイツは一本の木じゃなくて森全体を見る男だったってことよ。流石はあたいのマナデシ!」

何者かが異変を起こして幻想郷を蝕んでいる。しかしその存在の正体についてはとても自らの手に負えないことも何となく理解していた。

チルノ「だから信じよう? あたい達も知らないことをやってのけてくれる、それがあたいのマナデシなんだから」

そう言いつつ、今もリリーの横たわっていた地面をじっと見つめる大妖精の背中を優しくなでるのであった。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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