ちょっとしたトラブルに巻き込まれたものの、ただの人間ではないことが周りの妖怪たちにもわかったのか、無暗に絡んでくるような輩はいなくなった。

そんな折に酒場を見つける。鬼と言えば居酒屋なのかな……? とにかく予備知識のない俺にとっては雲をつかむような話。情報収集といえば酒場というファンタジーものの作品の常識にすがって探していかなければならない。

もちろんそんな簡単に上手くいく筈もなく、何軒も回るが芳しい結果は得られない。今度こそと目をつけた少し年季の入った酒場に入る。

暖簾をくぐると喧騒が一斉に俺を出迎えてくれた。ここの妖怪は皆飲んだくれなのだろうか? しかしこれだけ客であふれ返っているが人間は一人もいないのだろう。

適当な酒を頼むと人ごみを掻き分け、店内を見て回……ろうとしたが、その必要はなさそうであった。探し回るまでもない程に目立つ存在と俺は目が合ってしまったのだから。

額に見事な一本角を生やし、豪快に酒瓶の中身をグビグビと飲み干す。水色の着物は少しはだけているのか、胸の谷間が覗いており、目のやり場に困ってしまう。

貴方「もしや鬼の四天王……?」

角の生えた酒豪の妖怪といえば地上ではめったにお目にかかれない「鬼」で間違いないだろう。

それらしい角の生えた人なら何人か見かけたが、何というか威圧感が全然違う。傍にいるコンパクも今度は恐怖で小刻みに震えているようだ。

先程絡んできたチンピラどもは勇儀は「鬼の四天王」の一人であるらしいことを口走っていたし、もしかしたらあの一本角の彼女がそうなのかもしれない。

そしてその金髪の鬼と同じ卓で飲んでいるのがこれまた金髪の少女。いつの間にかアールバイパーから抜け出した嫉妬妖怪がそこにいたのだ。泣きながら何かを喚いているようであり、泣き上戸なのだろうがと思ったが、案外先程のバイドの巨大戦艦が怖かったと愚痴っているだけかもしれない。

そうして二人の様子をまじまじと見つめていたら鬼と目が合ってしまった。フウと酒臭い息を大きく吐き出すと、無言で手招きし始めた。これは、大人しく従った方がいいな。俺は警戒しつつ鬼のいる卓へ向かった。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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