いきなりの俺の登場にパルスィは目を丸くして驚いている様子だった。一本角の鬼の方は何やら機嫌よさそうに笑っている。
一本角の鬼「なるほど、こいつが噂の人間だな?」
大声で人間と言い出すものだから俺は焦った。周囲の妖怪たちの視線が一斉にこちらに向いたのを肌で感じ取れたくらいだ。
こんな妖怪だらけの場所に人間がいるなんてわかれば大騒ぎになるのは火を見るよりも明らか。俺は反射的にこう返した。
貴方「ち、違う。俺は人間じゃなくて……半人半霊だ!」
傍を浮遊していたコンパクを両手で掴むと前に差し出してあたかも近くに半霊を漂わせている人間とは別の種族になりすます。
一本角の鬼「ほぉ……」
感心したかのようなため息が漏れ出たと思った矢先、信じられないことが起きた。次の瞬間にはその鬼が俺の目の前にいたのだ。そして思い切り胸ぐらを掴まれる。
貴方「あ……が……」
一本角の鬼「そんな人間と幽霊がチグハグな動きをする半人半霊がどこにいる? 覚えておけ、鬼ってのは嘘つきが大嫌いなんだ」
獲物が来たとギラつく妖怪どもの視線は一気に恐怖にひきつったものに変わっていた。屈強な妖怪どももこの怪力の鬼には歯向かえないのだろう。やっぱり俺って鬼の四天王とやらに絡まれてる……?
一本角の鬼「パルスィがやたらと褒めちぎるから、少しは骨のある人間だと思っていたが、結局はその程度の……」
パルスィ「勇儀、こんな人食い妖怪だらけの場所で人間だってカミングアウトするなんて不可能よ!」
わずかに絞め上げる手の力が弱まる。勇儀と呼ばれた鬼ではあるが、どうやらパルスィとは親しい仲であるようだ。
勇儀「む、それもそうだな。安心するといい、私の目が黒いうちは無暗に襲わせないよ。ではもう一度聞こうか。お前の種族は人間で間違いないな?」
無言で「そうだ」と意思表示するべく首をカクカク動かすと、ようやく解放されたのか降ろしてくれた。それもゆっくり優しくと。
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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