そ、そんなっ……! 俺は驚愕した。

光を失った漆黒の空間が脈動していたのだ。何もかもを吸い込むかのように。

早苗「あ、あれは……。逃げましょう! アレに捕まったら……」
提督「奴め、最期の力で我々をバイドの蠢く『異層次元』に飛ばそうとしているのだ。アレに取り込まれたら、あのバイドに取り込まれたら帰れなくなる!」

振り向くことなく、少女達は一直線に逃げに入る。もちろん俺も……あれ、動かない?

白蓮「しまった、アールバイパーはもはや動くだけの力も残っていない!」

彼女が気づき、こちらに手を伸ばす。俺もすがるようにリフレックスリングを飛ばすが、届かない。俺は煽られながら漆黒色をした穴に吸い寄せられていく。

提督「いかんっ! あのままではバイドに取り込まれて……。彼に私のような辛い思いはさせるまい! ひじりん、皆を連れて先に行くのだ!」
早苗「ジェイドさんっ、それでは貴方が……」
提督「私は既にバイドだ。バイド化の心配はないよ。何があっても私も後で幻想郷に帰る。ああ、今度も帰って見せるさ。約束だ!」

コンバイラタイプのバイドが旋回してこちらに近寄ってきた。

貴方「提督……」
提督「動けないのだろう? 私が格納しよう。さあ、こっちへ」

違うのだ、燃料が切れたわけでもエンジンが破壊されたわけでもない。どちらも正常に動いている。別に力負けしているって感じでもない。異常だ、まるでここだけ物理法則がないかのように、俺は吸い寄せられなくてはならないと言われているように、俺は漆黒色の瞳孔に吸い込まれていくのだ。

提督「なんということだ……。こちらもコントロールがきかない! 接近しすぎたかっ!?」

その様子を見かねた白蓮が今度は近寄る。巻物を掲げ限界まで身体強化した白蓮はこの吸い込みをもものともせずに俺に手をさしのばす。

白蓮「この程度の吸引力、どうってことないですね。さしものバイドも死にかけていると力もこの程度なのでしょう。さあ、二人とも……あ、あれ?」

白蓮の力で引っ張っているのにビクともしないのだ。やはりおかしい。おかしいが、どうしていいのかわからない!

提督「このままではひじりんも……」
白蓮「でもっ!」

白蓮は吸い寄せられる気配が微塵にもない。それだけ強烈な身体強化をしているのだろうが、俺達を引きずり出せないのはやはり異常である。くっ、もはやここまでなのか。あと少しで地上に帰れたというのに……。

白蓮さんの目の前で提督が、俺が漆黒の瞳孔に取り込まれていく。それを見ているしかなかった白蓮さんの無念さは想像に難くない。俺も無意味と思いながらも操縦桿から手を放し、白蓮さんへ手を伸ばした。

白蓮「○○さんっ、○○さーん!!」

悲痛な白蓮さんの叫びがこだまする。俺も負けじと白蓮さんの名を叫ぶ。

しかし非情にも俺も提督も瞳孔に飲み込まれてしまった……。最愛の住職サマの涙がキラリと光る様子、これが最後に俺が認識した光景であった。



銀翼と妖怪寺AXE エピローグに続く……




名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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