だから、いやだからこそ……か。私は確かめなくてはならない。あの赤いバイドの抱いたトラウマが本物なのかを。バイド討伐などはその気になれば私にも可能だ。しかし、あちらの件は……
さとり「お燐、旧灼熱地獄に向かい『あの子』に会ってきなさい。どんなに小さな事でもいい、何か変化があったら私に教えて。これは貴女にしか頼めない事、分かりましたね?」
本当はこんなこと無意味だ。だけれど、本当はあいつらが知らないだけで、何かいい手だてがあるに違いない。祈るように、すがるように、私は消え入りそうなその声を絞り出した。
お燐「また旧灼熱地獄ですか!? ですがさとり様もよく知っているようにマグマの勢いは今も増していくばかりで、さっき向かった時も命がけだったのですよ? あの調子ではもはやあたいにも……」
この時の私はどんな顔をしていたのだろう。きっと、とても怖い顔でお燐を睨み付けていたに違いない。愛しきペットが恐怖に身をすくめていたのに気が付くと、私は慌てて表情を緩めた。
お燐「わ、分かりましたよさとり様」
しょげかえるとお燐は踵を返そうとする。私はその前に一言声をかけて引き留めた。
さとり「いいですか、『あの子』が助かるかはお燐にかかっているのです。ですから、ですから……うっ……うう……」
最悪の光景が脳裏によぎる。何もかもが手遅れになってしまう結末が、楽園が崩壊し、そして『あの子』が無残な最期を迎えるその時が。
そしてその時は回避する猶予も与えずに近づきつつあるのだ。こんな……こんなことって!
お燐「さっ、さとり様っ!?」
それはそれは声を上げて泣き叫んだ。ギュッと抱きしめその胸の中に顔を埋めて。
お燐「そんなに大泣きしなくても……、ちゃんと行ってきますから! あたいだって何とかしたいですし。ご安心ください、全て元通りに、元通りにしましょう! 出来ますから……ね、信じましょう?」
そのままお燐は黒猫の姿に変じると私の両腕からスルリと抜け出し、走り去って行ってしまった。
私は最後までお燐に真実を伝えることが出来なかった。そして私もそれを真実として受け入れることが出来なかったのだ。何か方法がある……と根拠のない希望にすがって。
だってそうしないと……あの銀翼は春告精にやってのけたように「あの子」を撃ち殺すに違いないのだから。
銀翼と妖怪寺AXE VIIに続く……
あとがき
名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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