まさに蛇に睨まれた蛙。お燐は化け猫の姿ゆえに俺よりもずっとサイズが小さいが、当然俺が蛙の方だ。

貴方「……せよ」

もはやこれまでだ。俺は自暴自棄になっていた。

貴方「とっとと殺せよ! 地霊殿を襲撃した報復に俺を殺しに来たんだろ! 隙を突かれた俺の負けだ、もう戦う意思もない。とっとと首掻っ切ってアンタの飼い主、さとり様とやらに献上しやがれよ!」

浴槽で仁王立ちしながらも、俺は目に涙を浮かべながら最後までお燐を睨みつけていた。それを聞くと化け猫は俺の喉元に飛びかかってくる。俺にはその動作が非常にゆっくりに見えた。そして走馬灯のごとくフラッシュバックするのは幻想入りしてからの刺激的すぎた毎日……。

そのビジョンを引き裂くがごとく、鋭い爪を今も隠しているであろう猫の手が……プニュと俺の額を押した。に、肉球!? 爪を突き立てるのではなく、柔らかな肉球で俺の額を蹴ると背後にまで跳躍したのだ。

貴方「馬鹿にしやがって! さては俺を散々精神的に屈服させた後で……」

温泉のお湯が湧き出る少し高台となっている岩場に立つと「ニャーン」と再び大きな鳴き声を上げる。上げながらその体は眩く発光し、そして化け猫は少女の姿となった。

お燐「この姿にならないとさとり様以外とはお話も出来ないから辛いもんだねぇ。少女の姿は窮屈だからね」

何か様子がおかしい。猫の姿でも十分に俺を殺ることで出来たはずだ。だというのに話が出来ないと言って赤毛の少女の姿に変わったではないか。話すことが目的であると言っているようなものだ。お燐は俺と話しに来たのか?

貴方「話だと? 何の用事だ? どんなに説得されても貴様の仲間になるつもりなどない! お前らの手先になるくらいならここで殺された方が数倍ましだ!」
お燐「あー、何もわかっちゃいないわね。あたいはね、確かに死体は好きだけど、自分で死体を作るのはナンセンスだなーって思ってるわけよ」

むっふっふと含み笑いをするお燐はさらにこう続ける。

お燐「それにさ、そうやって強がっている割には本当は怖くて仕方がないんじゃあないかい? だって、こんなに縮こまってる。ふふっ、小さいと結構可愛いもんだね♪」

そうやってからかうお燐が俺の下半身に視線を移していることに気が付いたのはその数秒後。俺は慌てて浴槽に入り込んだ。み、見られた……。




名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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