つまり古明地さとりが俺達に情報を吐かなかったのは、彼女が可愛がっていたペットがバイド化しているのがバレたら俺達に殺されてしまうから……ってところだろう。バイド化の仕組みは提督の心を読めばバッチリ分かってしまうし、もしかしたら似たような境遇のバイドが地霊殿を襲撃した際に知ってしまったとも考えられる。
もしも白蓮さんがバイド化していたとして、それを俺だけが知ってしまった時、俺はどうしていただろう……。彼女は、さとりはそれと同じくらいの苦しみに苛まれていたのだ。
貴方「そのお空ってのがバイドに肉体を乗っ取られているならば、俺はその肉体を破壊しないといけない。それしか手はないんだ。辛い選択だが……」
その俺の手を両手で覆うように包み込んだのはお燐。炎を扱う妖怪とは思えない程に冷たくなっていたその手はふるふると震えていた。
お燐「うん辛いよ、とっても辛い。お空はあたいの親友だし、バイド化してひとまず旧灼熱地獄から出られないようにしてからも何度か会っているのよ。でもお空が力を制御できなくなっちゃってて、さとり様は危ないから行けない。だからお空に会えるのはあたい一人」
ポタと俺の手の甲に水が落ちる。
お燐「でもバイドも心までは侵食しきれないようでね、ちゃんと記憶はそのままなの。さとり様が初めて来なくなった日は『さとり様は?』って寂しそうに聞いて来たり、あの子は普通に振舞ってるつもりでもあたいやさとり様を怪我させちゃったりとかしてさ、あいつなんて言ったと思う? 呑気に『だいじょーぶ?』だってさ。心まで化け物になったら諦めもつくのに、こんなの余計に辛いよぉ。うっ、うっ……」
先程までの軽口からは予想だにしない声が漏れ出ていた。本当は胸が引き裂かれるような思いなのだ。さとりはそんなお空を守ろうと庇い、お燐はそんなかつての友を本当の意味で救うべく、俺に助けを求めた。
泣きじゃくる猫の妖怪を優しく抱き留める。赤の他人でさえバイド化した少女を手にかけるのは躊躇したのだ。それが親しい間柄となるとなおさら。少しでも心の支えになって欲しい、俺はただそう思ってこんな行動に出たのだ。
お燐「お兄……さん?」
そう、幻想郷の少女同士で小競り合いなどやっている場合ではない。全ての元凶は地霊殿の奴らじゃなく、バイドなのだから。
貴方「○○だ。君にとって、そしてさとりにとっては辛いだろう、この真実は」
お燐「あたいも……辛い。これ以上お空が苦しむところを見るのは。お願い、お空を助けてあげて!」
助けること、それは即ち……。だがお燐はその選択を下せた。いいペットじゃないか、古明地さとり。もちろん俺も協力は惜しまない。
貴方「ああ、あんたの親友をバイドの呪縛から解放しようじゃないか。これ以上の悲劇を出さないって俺も決めている。これで最後にしよう!」
ようやく戦う相手が見えた。こうしてはいられない。俺達は白蓮さんの待つ広間へと駆けた。お燐は再び猫の姿に変じていた。
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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