(バジュラバイパー最後の出撃から数か月後の幻想郷……)

私はこの手で助けることが出来なかった。幾度となく彼に助けてもらったのに。照明もついてない部屋で私は自分の掌をまじまじと見つめながらため息をつく。

これでは住職サマに合わせる顔がない。○○は彼女にとっても大切な人だったのに、私が不甲斐ないせいでいなくなってしまったのだから。

もしも文だったら、もっと速く飛んでその手を掴むことだって出来ただろう。ああ、運動不足だったからだ。長年家に引きこもっていたツケがこんな形で出てきてしまうだなんて!

そうは言っても今の私はかつての自分のように家にこもりがちになってしまった。幻想郷全体は脅威が完全に去ったということもありお祝いムードであるが、彼は私だけではなく天狗達全体から見ても英雄である。そんな彼が生きて戻ってこれなかったということを非難する天狗だっていてもおかしくないのだ。

文「あややや、やはりここにいましたか。はたてさん、これから天狗と河童で集まって宴会ですよぉ」
はたて「いかない」

窓越しに気さくな声を投げかけてくるのは我がライバル。彼女からはまるで邪気を感じず純粋に遊びに行こうと誘っていることは分かる。

文「あややや、つれませんなぁ。大天狗様がよほどのお祝い事じゃないと絶対に出さないような珍しいお酒も出してくるらしいですよぉ?」

だが、他の天狗はどう思うのか? 英雄を見殺しにしたこの私を。

はたて「英雄殺しの私がそんなところに顔出したら、今度は私が殺される」
文「やっぱり○○さんのことが気になるんですか? 分かりました、私からは体調不良で宴会に参加できないって伝えておきましょう。ですが……」

去り際に文がこちらを振り向いて一言。外の光が逆行となり文の影が美しく床にまで伸びていた。

文「本当に○○さんは死んだのですか? 貴女の能力ならそれを確かめることもできるのではないですか?」

それだけ言い残すと文はパタンと扉を閉める。直後風を切る音が響き、彼女が飛び立ったことが分かった。

はたて「○○を念写しろっていうの? だけど、怖いよぉ……」

惨たらしい姿になっていたらどうしよう? それこそ原形をとどめていない可能性だってあるのに。写真機をギュッと握り私は再び薄闇に中でうずくまった。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

お気に入り登録登録済み一覧

セーブデータ
新規登録・ログイン・マイページはこちら