丑三つ時……。つまり約束の時間である午前2時になる前に俺は目覚めていた。
真っ暗な銀翼の格納庫の傍らにある作業机。そこに突っ伏してぐっすり眠っていたにとりをスルーして、俺は一人でバジュラバイパーに乗り込む。ごめんよ、にとり。俺はやはり幻想郷を巻き込むわけにはいかない。
コクピットに座り込むと、静かに計器類を操作して銀翼を起動させる。高鳴るエンジンの音にさすがのにとりも飛び起きた。
にとり「おいっ○○! お前まさか一人で行くんじゃないだろうなっ?」
兵装は……フォトントーピードにハンター、そしてグラビティバレットを選択。けたたましいサイレン音とパトライトのような回転する光が気分を高揚させる。
シャッターが開かれ、漆黒の夜空が目の前に浮かび上がる。そして足元には光るガイドビーコン。
これが最後のフライトになると思うと何もかもが愛おしい。ゴウンゴウンと滑走路まで移動すると目の前の扉が開かれる。思えばここに開けられた大穴、そしてそれをやらかしたにとりがいたからこの今の格納庫があるようなものだ。
にとり「一人で行ったら確実に生きて帰ってこれないぞ! 思い直すんだ!」
高鳴るジェット音。出撃の時は近い。よし、機は熟した。俺は俺の信念を貫く。ゆえに喚く河童を無視して発進させた。
貴方「バジュラバイパー、発進!」
そして急激にかかるG。銀翼は幻想郷を守るため、最後の戦いに出る。叫ぶにとりを尻目に。だが、そんな声など俺にはどうでもよかった。
こんな時でさえ、一度銀翼に乗り込むと俺は意識が高揚するのだ。今は、今だけは戦いに集中できる……と。
暗黒の空、今も上空でゆっくりと回転しながら幻想郷を見下ろしている赤黒いクリスタル。だが、まずは最大速度で守矢神社を目指す。ここで紫と落ち合って、俺が奴の領域に入り込みやすいようにスキマを弄ってもらうことになっているのだ。
山の上の神社に到着すると、恐らくはあのクリスタルから呼ばれたであろう敵機が霊夢と魔理沙、そして早苗の手で倒されているところであった。
その後ろでは椛が相変わらずクリスタルの監視を続けており、それらを取りまとめる為に柱の上で見下ろしているのが神奈子だ。
あちらは特に心配することはないだろう。俺がここに来たことを察知した九尾が近づいてくる。
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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