屋根の上には紫色の烏帽子に黒いツインテールの少女が一人俯きながら立っていた。顔は黄昏時の暗さも相まってよく見えないが、彼女は天狗のはたてで間違いないだろう。
はたて「○○っ!」
再び俺の名前を叫ぶ彼女はどこか思い詰めたような、真剣な面持ちをしていた。見上げると赤黒い亀裂と忌まわしき赤いクリスタルの不気味な光と共に帳が降りつつ空にはちらほらと星も慎ましく光を放っていた。
はたて「ずっと私はこれでいいって諦めてきた。ずっと私は影から見守ることを選んできた。ずっとずっと……私はこの現実を受け入れてきた……!」
今もはたては呟くように「ずっと、ずっと……」と小声で続けている。
はたて「だけど、このまま逃げたまんま終わっちゃうのなんてヤダ! ○○は今、勝ち目のない戦いに挑もうとしてるんだよね? だから……私、もう逃げない。私も、私なりの戦いを挑むわっ!」
顔を上げた天狗の少女は涙ながらに訴えかける。いつしか俺も寒さを忘れて耳を傾けていた。これは、ちゃんと受け止めなくてはいけないものだから。
はたて「○○、やっぱり私は○○が好き!」
この状況で何となくそんな気はしていたが、やはりはたての言う「戦い」とは告白のことだったようだ。そしてこの場合の戦いの相手というのは恐らくは……。
はたて「住職サマがいるのは分かっているわ。とてもお似合いだった。だから私は身を引いて、貴方の活躍の記録を後の世に残すことを選んだの。だって、大好きな○○を困らせたくなかったから。だけど……」
一歩二歩、ツインテールの天狗は俺に近づく。そして……
はたて「だけど『好き』って気持ちはいつまでも消えなかった! むしろどんどん大きくなっていったの!」
冷え切った俺の両手をギュッと握ってくるはたて。これは俺の気持ちも正直に示さないと罰が当たるな。
貴方「気持ちは嬉しい。だけど、銀翼乗りとしての○○は明日に死ぬんだ。もしかしたら俺そのものの命も……」
静寂が周囲を覆う中、はたてはゆっくりと俺から手を放す。
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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