貴方「心配無用だ。俺はもう逃げない。俺がここに逃げ込んだせいで花畑を荒らされた、大切な向日葵を折られたというのなら、俺にも何か手伝わせてほしい。黄色い絨毯が途切れたのなら一緒にまた作ればいい。こんな事しかできないが、これが俺の精一杯の償いだ」

そのあまりにまっすぐな視線に幽香が今度はたじろぐ。

幽香「アンタ自分で何を言っているか分かっているの? 一月や二月で出来上がるようなものではないのよ? それに妖怪と暮らすだなんて、私の気まぐれ次第でいつアンタがバラバラになってもおかしくないのよ? そんな事……」
貴方「それでも構わない! いや、あんたならそんな事をしない。花1本を折られてあんなに涙を流すあんたに、悪戯に命を弄ぶような真似は出来ない筈だ!」

言い切ってやった。ここまで言って俺を受け入れないのならそれまでだったと諦めがつくし、もしもこの俺を受け入れるというのなら、この謎だらけの事象やこの幻想郷という地の調査を続ければいい。

流れる長い長い沈黙。しかし互いに視線を逸らすことはしない。にらみ合うこと更に数秒……。その沈黙を破ったのは意外にも幽香のほうであった。プッと噴き出したかと思うと、何を思ったのか大笑いし始めたのだ。

幽香「あははは……。とんだお人好しじゃないの。私が好きなのは綺麗な花を咲かせる植物だけよ!」

それだけ言い切ると腕を振り上げ、こちらに向けてきた。ヒッと俺は縮こまり、更にその雰囲気に威圧されて尻もちをついてしまうが、いつまでも衝撃は来ない。殴ったわけではないのか?

幽香「そう、私は厳しいの」

よく見ると拳ではなく手を差し伸べていた。唖然としているとさっそく怒号が飛んできた。

幽香「花のお世話をしたいんでしょ!? うちは厳しいのよ? 毎日5時起きでお花のお世話。明日からやってもらうわ。寝坊したらぶん殴るんだからね?」

どうやら俺をここに匿って貰えるようだ。喜んで俺は幽香の手を取った。

幽香「本当に変わり者のようね。この天下のフラワーマスターである風見幽香相手にそれだけ啖呵を切って、しかも一緒に住もうとか言い出す人間なんてそうそう居ないわ。気に入ったからボロ雑巾のようにこき使ってあげる」

かくして幻想郷での居場所ができたのだが、しばらくは色々と苦労しそうだ……。

幽香「そういえばアンタと一緒に花畑を荒らした八雲の一味にも仕返しできていないわ。変な乗り物に乗って落ちてきたんでしょ? あの乗り物をまず見つけるわよ!」

かくして俺は太陽の畑で幽香と共に暮らすことになった。謎だらけの幻想郷、俺の命を狙った八雲の一味、そしてなぜか実体化したフリントロックとフリント……。しばらくは色々と大変な日々を過ごすことになるであろう。

修理を施した外界の最新鋭戦闘機「フリントロック」を駆り、相棒である幽香と共に様々な異変を解決していくことになるのだが、それはもう少し先の話になる……。

そして歯車は回り始めたのだ。銀翼とフラワーマスターの数奇な運命がここから始まる……



銀翼と妖怪寺I.F.
~Irregular Future~
風見幽香編
END




あとがき

名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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