日も傾くころ。俺は地べたに寝っ転がっていた。
幾度も拳ではなくて弾幕で語り合った氷の妖精のくせに暑苦しい奴も隣にいる。
お互いに既に立ち上がる気力はなく、ただただ息を弾ませていた。
オーバーワークで煙を上げていたアールバイパーは既に元のサイズに戻り、命蓮寺の庭で横たわっていた。

ああ、涼しい風が心地よい。俺は我が愛機と死闘を繰り広げてきた強敵に称賛の言葉を贈る。

貴方「お前……本当に強いんだな。効いたぜ、土壇場で発動した『パーフェクトフリーズ』」

自分で撃った弾幕を凍らせたかと思いきや急に動かされた時は、度肝を抜かされて撃墜されてしまった。
お互いの手の内(スペルカード)はあまり多くなかったようで、あとは弾と弾のぶつかり合いだった。撃つ、避ける、時たまスペル発動。

チルノ「アンタも……ね。あんな高い所にすぐに飛んでまた元の高度に戻るなんて芸当、そうそう見ないわ」

こちらも息を弾ませているチルノから、称賛の言葉を貰う。お互い、自然に笑みがこぼれていた。非常にすがすがしい。

夕陽の相乗効果も相まって気分は河原でお互いが倒れるまで拳を交えた後、友情が芽生えるという青春ドラマでよく見るアレである。
こうなったらやるしかないだろう。上体を起こすと握手を促す為に右腕を差し出した。

チルノ「(グッ!)」

彼女もそれに応じて俺の手を握る。この間は終始無言だった。もはや言葉はいらない。言いたいことは弾幕で全部言いつくしたのだから。
いかに暑苦しい性格でもその体は氷の妖精、やはり冷たいものだった。
体が火照っていたのでちょっとありがたい。夕陽が目にしみる。遠くでカラスの鳴き声まで聞こえてきた。

チルノ「あ、カラスが鳴いたから帰る! 大ちゃんが心配するし。じゃあまた今度、もっともっと最強になって○○を驚かせてやるから。じゃあね、バイバイ!」

大ちゃん? 彼女の友人なのだろうか? 恐らくあだ名なのだろう。なんだか変なあだ名だであるが、頭にそう思うだけで口には出さない。
黙ったまま帰路につく氷精に手を振り続けた。

弾幕ごっこを通じて妖精と仲良くなれた。思い切り全力と全力がぶつかり合えば友情が芽生える。
これはもしかすると、あの大妖怪とも……和解出来るかもしれない。淡い希望が俺を包んでいた。


銀翼と妖怪寺Vに続く……



あとがき

名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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