(その頃、幻想郷某所……)

結局僕は大妖怪に逆らうことは出来ず、こうして九尾の狐の人質のような手下のような……とりあえず普通ならとても受け入れられないような屈辱を受けている。

元々荒事は苦手だし、相手が九尾の狐とあれば僕だって正面衝突すれば無事ではないだろう。だから従うほかなかった。

最初に頼まれたのは瀕死の重傷を負った霊夢を背負うこと。夜の闇の中、いささか心許ない月明りのみが僕に与えられた光だ。そんな劣悪な環境の中、かなりの距離を歩かされた気がする。

僕ははぐれないようにあの九尾の狐の声を頼りに歩みを進めている。だが、その行先はどうやら永遠亭ではないようだ。その証拠にいつまでたっても竹林らしい場所にたどり着かない。

さらには明らかに整備されていない獣道ばかり歩かせるのだ。まったく、力仕事はあまりしたくないというのに。その理由を彼女に聞いたら驚くべき答えが返ってきた。

藍「博麗の巫女がこのようなことになっていることを悟られてはいけない」

今ので確信した。この女狐、病院には意地でも向かわないつもりだ。恐らくは自分で霊夢の治療を施すつもりなのだろう。さらに現場を目撃されないようにかなりの注意を払っていることもわかる。これは途中で逃げたりしたら殺されるな……。

ヘトヘトになりながら目的地に着いたらしい。見上げると大きな屋敷が見える。案の定、永遠亭ではなくて八雲亭であった。

霖之助「君は優秀な妖怪なのだろうが、やはりこういったものはその道のプロに委ねるべきだと思う。素人が手を出していい領域じゃない。霊夢にもしものことがあったら……」
藍「この事件が明るみになれば幻想郷は混乱に陥るだろう。紫様は死に、霊夢もこの状態なのだから。今の幻想郷は危険な綱渡りの末に辛うじて維持できているに過ぎない。そのリスクを最小限にする為には私がやらないといけない」

それだけ言うと彼女は霊夢を抱えて部屋に閉じこもってしまった。僕に入口の番を任せて。

間もなく九尾の狐が籠っていた部屋からは炎の燃える音やブツブツと何か呪文を唱える音が聞こえてくる。あれでは手術というよりかは呪術だ。お湯の沸騰する音に雷がほとばしるような鋭い音、果ては金属を引っ掻いたような不快な音までが響き渡り、最後は爆発音がした。

ううむ、大丈夫なんだろうか……?



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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