貴方「永琳先生!」

永遠亭の名医者の名を呼びながら俺は扉を開けて診察室に押し入る。急な来客に驚いて身を縮こませていたのは永琳ではなく月のウサギであった。

鈴仙「えっ、○○? こんな遅い時間にどうしたの?」

ありゃ、さっきの患者の診察をしていたのは永琳ではなく、彼女の弟子である鈴仙であった。今も彼女は透き通った赤い目で怪訝そうにこちらをのぞき込んでいる。そりゃそうだろう、今の俺は特に体調が悪いわけでもなければそういった人の付き添いできたわけでもない。とても病院に用のある人間には見えないからだ。

これ以上鈴仙を困惑させないためにも俺は話を切り出すことにした。

貴方「永琳は……いないのか?」
鈴仙「お師匠様なら大事なお客様が来たからって席を外していますよ。そういえばまだ戻ってきませんねぇ。随分と長く話し込んでいるようです……」

なるほど、それで鈴仙に任せられていたのか。聞いた感じだとずいぶんと長い間代理を任されているようだ。ならば彼女が知っているかもしれない。

貴方「ちょっと聞きたいことがある。今日、霊夢がここに来なかったか? 随分と酷い怪我を負っていたはずだ」

博麗の巫女の名前を出すも、この月のイナバは首をかしげるばかりである。あの様子だと霊夢を見ていないのだろう。案の定、鈴仙はゆっくりと首を横に振った。

鈴仙「霊夢さんが大怪我してここに運び込まれたら今頃大騒ぎですよ。でも私はそんな話を聞いてません」

そうか……。では藍は霊夢をどこに連れて行ったんだ? いや、待てよ……。永琳は、鈴仙よりも医者としての頭脳も腕もたつ彼女はどこにいる? お客さんと「長く」話し込んでいるというではないか。

貴方「まさか……。ちくしょう、そういうことかっ! コンパク、応接室に向かうぞ!」
鈴仙「えええっ!? ダメですって!」

今奥の応接室で永琳と話をしている客ってのは恐らく藍だ。そして長く話し込んでいるのではなく、そこで霊夢の治療を行っているんだ。理由は大方「霊夢が生死のはざまを漂っていることを公にしたくない」とかそんなところだろう。

俺は霊夢に会ってあのことを伝えればいいだけだ。そう「八雲紫は生きている。だからこれ以上無茶はするな」、この一言を伝えるだけでいい。後で俺がつまみ出されようがボコボコにされようが構わない。霊夢に希望を与えられさえすれば……。

俺は応接室の扉に手をかけた。

貴方「霊夢っ!!」



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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