(幻想郷、迷いの竹林内、永遠亭前……)

結局僕こと森近霖之助はまともな抵抗もできないうちに永遠亭まで連れてこられてしまった。さしもの九尾も霊夢の治療に失敗したという事態は想定外だったらしくどこか焦燥しているようだ。

藍「ここからは私一人で行く。帰りたければ一人で帰るといいさ。……まあ帰れるならばの話だけど」

どこか嘲笑したかのような口ぶりで彼女は金色の瞳をざわざわと音を立てる笹の葉に向ける。ここを離れれば迷いの竹林であり、中で迷子になってしまえば命の保証はない。

僕がここから一人で離れられないのを知っていてこうやって意地悪をしているのだろう。そう、ここは夜の迷いの竹林、こんなところでほっぽり出されて五体満足で外に出られるかどうか……。これは明らかに分が悪い賭けと言わざるを得ないだろう。

霖之助「やれやれ、選択肢はないようだね」

あんなことを言っているが、彼女にも余裕などないはずだ。どこからか取り出した黒いローブを頭からすっぽりとかぶると霊夢を抱えて中に入って行ってしまった。まるで子供が急に熱を出して慌てて病院へ向かう母親のような、そんな光景に見えた。

結局は囚われの身といったところだ。それにしても霊夢は誰と戦っていたのだろう? 僕や霊夢を狙う存在がいたのまでは分かるが、僕は奴の姿を見ていないのだ。僕を守るために扉に封印を施し、霊夢はたった一人で戦いに挑み、そして敗れたのだろう。

それにしても、誰が何のために霊夢をここまで痛めつけた……?

と、思索を巡らせていると遠くから獣の唸り声のようなものが聞こえてきた。まずいな、獰猛な妖怪がこの近くにいるのか。僕は慌てて近くの竹に身を隠して様子をうかがった。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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