それは尖った骨か牙……いや、爪か? とにかく白くて尖った硬そうなものを組み合わせたような姿であった。それが音もなく浮遊してこちらに近づいてきているのだ。

前方には大きな牙のようなかぎづめのような鋭い顎があり、胴体部分にわずかに肉塊が盛り上がっており、一応は生命体らしいことが分かる。今も肉塊は小さく鼓動を続けている。

あのグロテスクな見た目はまさかバイドじゃないだろうな……。まいったぞ、仮にそうだとしたら厄介なことになりそうだ。言葉が通じない上に攻撃的な奴らだと聞くし、仮に意思疎通ができたところで話が噛み合わないなんて事態はザラにあるというのだから。

クロークロー「チックショウ、俺の全財産をルーミアちゃんに賭けたっていうのによぉ……ブツブツ」

恐らくは賭け事で大負けしたのだろう。そういえば胡散臭いタヌキの妖怪が賭け弾幕ごっこの元締めをやって随分と儲けているらしいという噂を耳にしたことがある。

クロークロー「これじゃあ俺様『クロークロー』スカンピンだ。カネは貯まらないのに鬱憤だけが溜まりやがる……ヒック」

少なくとも対話ができるタイプのバイドであるようだ。だが状況は明らかに悪い。賭け事に溺れ、あの調子だと酒にも溺れているのだろう。その素行の悪さは人間だったらチンピラの類、できれば関わり合いになりたくないタイプである。そして僕はうっかり奴と目を合わせてしまった。

クロークロー「ああン? 見世物じゃねぇんだよ、この眼鏡がっ! ああそうだ丁度いい。お前随分と身なりがいいじゃないか。ちょいと金目の物を恵んでくだせぇ……よっ!」

僕は殺気を感じ、とっさに身を屈めた。案の定「クロークロー」と名乗ったバイドはその前方の大きな爪を振りかざし、斬撃を放っていた。先ほどまで僕の立っていた場所の竹がスッパリと両断されている。

霖之助「ひいい……」

相手が飲んだくれで助かった。その狙いは甘く、明らかに素人丸出しな僕の動きでも回避することができた。だが、僕は恐怖のあまり腰を抜かしてしまった。バイドに両断された竹の鋭い切り口がこちらを向いている。そう、その切れ味は全く衰えていないようなのだ。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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