僕はこういった荒事が大の苦手だ。いつもなら様々な道具で撒いて見せるのだが、あいにく今回は九尾の狐にさらわれている身。ロクに対策などできる筈がないのだ。
クロークロー「お前までこの俺様を馬鹿にするのか! 気に食わん、気に食わんっ! 命までは取らないつもりだったが久方ぶりにバイドの本能が疼きだしやがった。細切れにしてやるっ。ギチギチギチ!」
腰を抜かしている僕に回避するという選択は取れない。だがみすみす殺されるつもりもない。立ち上がれなくても少しでも後退しようと必死にもがく。そしてその手が何か固いものを掴んだ。
霖之助「これは……!」
先ほどクロークローが両断した竹である。斜めに鋭く斬られたそれは即席の竹槍としても使えそうである。
霖之助「ええい、ままよっ!」
鋭い爪の中心、その奥で怪しく赤く光る奴の目めがけ僕はそれを思いきりぶん投げた。生々しい肉の裂ける音を立てながら竹槍は深々とバイドの中心に突き刺さった。
クロークロー「ギャアアアア!?」
よし、これでしばらく奴の視界は封じられた。だが僕の手ではバイドを完全に退治することは出来ないだろう。なのでこの後逃げなくてはならない。……どこへ?
迷いの竹林を出鱈目に走ったところで遭難してしまうのは火を見るよりも明らかである。だからと言ってこの場に残るという選択はあり得ない。何故なら……
クロークロー「こンのクソ眼鏡! どこ行った? ぶっ殺してやる!」
爪を滅茶苦茶に振り回して周囲の竹を切り倒し続けているのだ。あんな奴の傍に居続けるなんて自殺行為である。そうなると僕が逃げるべき場所は……。
霖之助「やれやれ、結局そうなるのか」
永遠亭の中に逃げ込むしかない。そしてそれはあの憎き藍の下につくことを意味する。それも僕自身の意思でそうすることになるのだ。だが、命に代えることは出来ない。
今も暴れるバイドを尻目に、僕は永遠亭に転がり込んだ。
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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