ゆっくりと目を開ける藍。それに気づいたのか橙も駆け寄ってきた。

橙「藍様っ、目を覚ましたのですね! それに元の穏やかな顔……。優しい藍様に戻って橙は嬉しいのです」

ゴロゴロと喉を鳴らす黒猫は今も横になる藍に抱き着く。

藍「橙、こんな私を許してくれるのかい? 失敗ばかりで、一人で思い詰めて思い詰めて……その結果、更にとんでもないことをしでかしてしまったこの私を」

応える声はなかったが、橙の態度が全てを物語っていた。そこにいるのは大きくて誰よりも優しい、そんな大妖怪を慕う黒猫の妖怪。

紫「いい式神を持ったじゃない。私も同感よ。元気になったらまた馬車馬みたいにこき使ってやるんだから、今はもう休みなさい。私はもう一仕事しないといけないのだから」

その内容は言わずもがな、霊夢の記憶を復元することである。霊夢も既に目を覚ましているのだが、完全に上の空といった状態であり、とても元に戻ったとは言い難い。

そしてこの後の発言が、もはや彼女の体の中に霊夢が存在しないことを決定づけてしまったのだ。

霊夢「メリー! こんなところにいたのねっ。ずっと、ずっと探したんだから!」

紫の記憶もないらしく、彼女のことをメリーと呼んで後ろから抱きつく始末であった。

紫「打つ手……なしね。残念だけど博麗の巫女は本当に死んでしまったわ」

悲痛な面持ちで俯くスキマ妖怪。だがそれ以上に彼女の式が目も当てられない程に委縮していた。

藍「紫様、申し訳ありません……。私の勝手な行動のせいで、幻想郷を守るつもりが逆に追い詰めてしまうことになるとは……」
紫「過ぎたことは仕方ないわ。全てが片付いたら新しい博麗の巫女を用意する。今までと同じように」

戦力として期待できない以上、このような非情な決断もやむを得ないということか。だが、その申し出に真っ向から異を唱える者もいた。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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