藍「私は紫様が死んだことを真っ先に悟った。理由までは分からない。だが、式としてのリンクがプツリと切れるあの感覚を間違えようがない。紫様はもうこの世にはいないんだ」
ふむ、それは幾度となく口にしていた。だが、それで霊夢を殺すのは随分とおかしな話だ。
藍「それに今の幻想郷は外界の侵略者の手によってすっかりボロボロになってしまっている。この状況も踏まえて、私は新しい幻想郷を作り出そうとした。かつての紫様が外界と隔離した楽園を作り出そうとしたように」
これも藍の行動原理から何となく推測は出来た。ここからである。俺達も知りえない事実を話し始めるのは。
藍「幻想郷を乗っ取ろうとする侵略者は当然博麗の巫女をも狙うだろう。実際に霊夢が貴様に襲われたあの日に、私は霊夢にある術をかけた。紫様がいない以上、私が霊夢を、博麗の巫女を守るべきだから」
いよいよ藍の口調が悲壮じみたものになってくる。
藍「私は霊夢から博麗の巫女としての記憶を一度抜き取り、彼女に性質の似た外来人の記憶を模倣して移植することにした。外来人の名前は『宇佐見蓮子』。来る日のために迷い込んだ外来人に偽装させ、全てが終わった後に記憶を元に戻し、新たな幻想郷の守護者としてその力を振るって貰う筈だったんだ……」
冒頭で藍は失敗したとも言っていた。失敗ってのはまさか……!
藍「だが、失敗した。取り出した博麗の巫女の記憶は崩れ去り、宇佐見蓮子としての記憶も不完全な状態で霊夢の体に宿ってしまった」
なるほど、それが霊夢を殺してしまったということの真相か。
藍「だから、私一人でも新しい楽園を作ることにした。そのためには脅威となる存在は必要ない。だから外来人は全て破壊する! この私に異を唱える者もだ!」
なんて自分勝手な……! コイツは逃げているだけだ。侵略者にボロボロにされた幻想郷から逃げ、万物を受け入れる筈の幻想郷の理からも逃げ、全てを水に流して自分だけの世界に引きこもるつもりだ。
神奈子「ふざけるんじゃないよ! それで早苗も殺したのか!」
藍の手が光り、今ももがく橙にあてがわれる。殺すにしても洗脳するにしてもこれはマズい!
そう慌てふためいていたその時、虚空から懐かしい声が響いてきたのだ。
あら、また「待て」の訓練からやり直しかしら?
可愛らしくもどこか威厳のある。人を小馬鹿にしたような、でも誰よりも真摯な。二つの要素が相反し合ったような不思議で胡散臭い声。
その声の主を探すべく、俺も藍も空を見上げた。
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名前:聖白蓮
身体強化率326%
お姉ちゃん!
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