その声の主を探すべく、俺も藍も空を見上げた。

だが虚空には空飛ぶ八雲亭を除いて何もない。程なくして今度は足元から声が響いた。

紫「こっちよ。それにしても藍が新しい幻想郷の主……ねぇ? しばらく見ないうちに随分と偉くなったようで?」

地面からニュッと出てきたスキマ妖怪は扇子を片手にクスクス笑っている。とんでもない能力をちょっとしたイタズラに無駄遣い。こんなことするのは八雲紫くらいだ。この状況に俺以外はみんな驚愕していた。特に藍。

藍「そんなっ……! だって、だって式としての繋がりが切れて、それで……それで……」

今も現状を受け入れられない藍に紫はからかうように胸元から小瓶を取り出した。アレは他でもない「紺珠の薬」の入っていた瓶である。

紫「確かに能力の行使を封じられた状態でスキマの中に閉じ込められたりはしたわ。だけどね、銀翼に乗ったナイト様が私を助けてくれたの♪」

最後に俺に向かってウインク。ううむ、間違っちゃいないけど……。それにしても本当に今まで何をしていたんだろうか? とにかくこのやり取りでようやく藍も自らの過ちを認めることが出来たようである。

だが、それですべてが落ちつくのかと言うとそういうわけではなく……。

藍「ゆかっ……りさま……。ゆかり……しゃま……。ゆかりしゃまー、あーん!!」

号泣しながら藍は紫に抱き着いてポコポコと力なくその体を叩いたり、服をギュっと掴んだりしていたのだ。あれではまるで幼子である。

紫「色々と言いたいことはあるけれど、でも今くらいは労ってあげないとね。よしよし、藍は藍なりによく頑張ってくれたわ」
藍「ぐすっ、ひぐっ……。生きてるなら、生きているのなら、私にだけでもコッソリ教えてくれていればよかったのに……! どれだけ私の心は引き裂かれそうになったか、どれだけ不安で潰れそうになったか! わぁぁぁぁぁ……!」

今も藍は「ゆかりしゃま、ゆかりしゃま」と舌足らずな口調で主の名を呼び続け、紫は優し気な面持ちで彼女を撫でる。



名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

お気に入り登録登録済み一覧

セーブデータ
新規登録・ログイン・マイページはこちら