め、滅茶苦茶だ……。気がつくとアールバイパーは黒煙を上げ墜落しており、その上を霊夢が少し退屈そうな顔をして浮遊していた。

何が何だか分からないうちに屈してしまったのだ。こちらの攻撃はことごとく避けられ、相手の攻撃は避けた筈なのに当たっている。それは決闘の体をなしておらず、もはや暴力の領域であった。

どうにかコクピットから脱出する俺。

霊夢「なんだつまんない。紫を退治したっていうからもう少し骨があると思ったのに」

何故だろう、ここまで潔く負けると悔しささえ感じなくなる。うん、こんな勝負なかった。

霊夢「勝手に無かったことにしてるんじゃないわよ! さあ、アンタのお宝をいただくわよ」

うう、ごまかせなかったか。俺の一番の宝と言えば……。

貴方「俺にとって大切な宝ってコレのことだけど……」

俺と共に幻想入りし、幾多もの危機を共に渡り歩いてきた銀色の翼を持った相棒。それこそが俺にとって一番のお宝だ。それを指差して見せる。

霊夢「は?」

貴方「だからコレだけど。超時空戦闘機『アールバイパー』。またの名を『希望を繋ぐ銀翼』、ちょっとマニアックな呼び方だと『銀蛇伯爵』。これがあれば自由に空を飛んだり弾を撃ったりできるのさ。俺にとっては一番の宝物だな」

唖然とする霊夢。まるで魂を抜かれたようである。

霊夢「こ、これが一番のお宝……? (い、いらねぇ……。そんなのなくても私飛べるし弾幕出来るし……)紫ィ、騙したわね!」

俺と霊夢の間に空間の裂け目が音もなく発生する。こんな登場の仕方をするのはあの妖怪賢者くらいだろう。呼ばれて一々出てくるのだからアレで結構律儀な性格なのかも。

紫「あら、私は一言も嘘なんて口にしていないわ。あれこそが幻想郷をひっくり返しかねない超技術の塊『アールバイパー』よ。外来人の持ち出すものの中でもとびっきりのレアなお宝よ」

開いた扇子を口元に添えながら、涼しい顔でスキマに腰かけている大妖怪。と、スキマの中から子供の声が聞こえる。

橙「紫様ー、食事中に席を立ったらお行儀が悪いですよー」

直後、スキマに向かって微笑みながら手を振ると紫はスキマごと消えてしまった。これには霊夢だけでなく、俺もポカンと立ち尽くすしかなかった。どれだけ神出鬼没なんだ、あのスキマ妖怪は。

霊夢「と、とにかくそんなものじゃ私は満足できないわ! 外来人なんだし、他にも幻想郷ではお目にかかれないレアものとか持っているんでしょう?」

アールバイパーを奪われずに済んだのはよいのだが、これはこれでバイパーを侮辱されたようでなんか釈然としない。心の整理をつける間もなく、霊夢がズイと詰め寄ってきた。顔が近いです、そんなにされても出ないものは出ないですよ!




名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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