(○○が冥界に突入する少し前……。人里路地裏……)

ここ幻想郷でも、こんな真昼間から酒をかっくらう人間というものはいるものだ。飲み屋でどれだけアルコールを飲んだのか、泥酔しながら路地裏を歩く男の姿があった。

訳の分からないことを騒ぎ立てフラつきながら路地裏をゆらりゆらりと闊歩する様ははた迷惑であり、ここが路地裏であることが唯一の幸いであった。こんなのが真昼間から表通りを闊歩していたらとんだ恥さらしである。

と、一人の酔っぱらいが誰かとぶつかった。そそくさと立ち去ろうとする相手を捕まえると、因縁でもつけているつもりなのか、早口でまくし立てているが、何を言っているのかさっぱり分からない。哀れ酔っぱらいの餌食になった人は困惑しつつ、時折鼻孔をくすぐる酒臭い息に顔をしかめるしかなかった。

このままどうなるのかというと、その酔っぱらいは唐突にぶつかった相手を解放するとそのまま離れていってしまった。この男、相当酔ってる。

こんなのに絡まれてはたまらないとたまにすれ違う人も避けるように過ぎ去っていく。そんな中、路地裏の特に寂しい場所、酔っぱらいの目の前に立ちふさがる少女がいた。

少女はかなりの小柄であったが、その瞳は不気味なほど紅色にギラついている。手にしているのは少女が扱うには不格好な程の長い刀。見るとポタポタと赤黒い液体が滴っている。

少女「斬る……。斬ればこの世の真理が分かる……」

流石の酔っぱらいもこんな変な少女を前にしたら酔いも一気に醒める。「ヒッ!」と上げる小さな悲鳴そして次に出るのは情けない「辻斬りだァ~!」の筈であったが、男に悲鳴を上げる機会が与えられることはなかった。

無言で降り降ろされる刀。酔っぱらいだった男に血の花が咲き乱れる。ドウと肉の体が地面に突っ伏す鈍い音のみが響く。更に容赦なく刀を突き付ける。

少女「少し外した。これじゃあ分からない。分かるまで斬る……」

今度は急所に狙いを定め、刀を振り下ろす……。男、突っ伏しながら声にならない悲鳴を上げる。

だが、その刀が人を殺めることはなかった。その一撃が降り降ろされる前に、この凶行を目にした人間が騒ぎ立てたのだ。「辻斬りが出た!」と。

血濡れの刀に血の海を流す人間。そして集まりつつある外野。少女は分が悪いと判断したか、高く跳び上がると屋根の上を走りこの場から消えた……。

後にはこの惨事に驚きおののく声、医者はまだかとどなる声、何の騒ぎだとはやし立てる声が響くのみであった。

その中心では血の海を流しながらうめき声を上げる哀れな酔っぱらいがいた……。

間もなく医者が到着し、瀕死の酔っぱらいが担ぎ込まれる。他の人間に出来ることと言えばこの辻斬りの刃にかかった男が無事であることを祈るのみである……。




名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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