冥界というからもっと陰鬱で暗い場所とばかり思っていたが、俺の予想を大幅に裏切る光景が目の前に広がっていた。

肌寒くはあるがそれを除けばまるで現世と変わらない、むしろ美しく見えるような気もするくらいだ。

眼下に広がるはどこまで続くとも分からない階段。徒歩であそこを進むのは正直死ねる。あ、ここは冥界か……。それにしてもアールバイパーがあってよかった。というか、これがなければ俺は空を飛ぶことすらできないわけか。

こんな所にも妖精は紛れこんでいるようで、こちらにちょっかいを出すべく弾を放ったりしてくる。あまり相手にする余裕はないのでスルーしたいところだが、ここで半霊が飛び出して妖精にまとわりついた。動きが鈍っている間に更に先に進む。頃合いを見て半霊を呼び戻せばよい。呼びかけに素早く反応してこの愛らしい真っ白な生命体は俺の元に帰ってきた。

それにしても本当に美しい場所……。道の左右に植えられているのは桜の木だろうか、この冥界のオーナーはよほど桜が好きなのかもしれない。

そう思索を巡らせているととてもこんな高空にあるとは思えないほどの大きな屋敷を発見。建物という事は誰かが住んでいるに違いない。ここの人(あれ、幽霊かな?)に聞けば半霊も元の場所に戻れる筈。

???「あら、どちら様? 鳥料理は好きだけれど、生憎そんな硬そうな鳥はお断りよ?」

俺がここまで来たことに気がついたのか、おっとりとした女性の声が響く。おっとり具合は白蓮にも引けを取らないが、若干声が高い気がする。

見上げると水色の和服に身を包んだ女性がふわりふわりと浮遊していた。帽子には彼女が生者ではないことを示す三角巾がついているのだが、何故か赤い渦巻マークのデザインが為されている。まるで一昔前のゲームハードのマークだ。

見るからに幽霊っぽい見た目。ただし脚はある。桜の花びらを連想させる桃色の髪をなびかせるその姿は怖いというよりかは神秘的であった。なるほど、冥界が美しいならそこに住まう住民も美しいということか。

というかこの幽霊も俺を食べようとしていたのか。幸い「硬そうだからお断り」らしいが。

???「ちょっとしたジョークよ。ところで貴方、奇妙な乗り物に乗っているけれど、中身は人間ね。私にはわかるわ。生きている人間がこんな場所……『白玉楼』の『西行寺幽々子』に何か用なのかしら?」

着物の袖から取り出したのは扇子。西行寺幽々子と名乗る霊体の女性は開いた扇子を口元に添えている。どうして幻想郷の女性はこうも高圧的な人ばかりなのだろうか? 俺はやれやれとため息をつきつつ、迷子になった半霊の話を切り出す。

幽々子「あら、そういえばその乗り物……硬そうな銀色の翼を持っているのね。もしかしてその乗り物って『チョウジクウセントウキ』?」

貴方「え? あ、ああ。確かにこいつは超時空戦闘機『アールバイパー』だけど……」

用件を話そうとした矢先に投げかけられた質問。唐突であったにもかかわらず、それにとっさに答える俺。いつも「変な鳥の妖怪」扱いなので、ちゃんと名前で呼んでくれた事が嬉しく、思わず返事をしてしまったのだ。だが、それがまずかった。あれだけ威圧的だった幽々子が途端に瞳を輝かせている。

幽々子「そ、それじゃあ貴方ってあの○○君っ!? 紫と弾幕ごっこをして打ち勝ったっていう……」

まるで子供のようにはしゃぐ幽霊。

幽々子「幽霊じゃなくて亡霊よー♪」

心を読むなっ!




名前:聖白蓮
身体強化率326%

お姉ちゃん!

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